こんにちは。メルカリEngineering Officeの@yasu_shiwakuです。この記事は、Mercari Advent Calendar 2022 の2日目の記事です。
本記事では、技術情報の発信をおこなっているMercari Engineering Blogの定常的な計測を実施した経緯と、Engineering Blogを通じたここ1年間のおおまかな技術広報活動について振り返っていきます。
Engineering Blogについて
Mercari Engineering Blogとは、メルカリのエンジニア組織が技術情報の発信(技術広報活動)をおこなっているプラットフォームの一つです。
技術情報の発信という文脈では他にもYouTubeチャンネル やDev Twitterなど、開発者向けの情報発信をおこなっているチャンネルはいくつかありますが、2015年に開始したMercari Engineering Blogが最も歴史が長いです(かつてはQiitaやはてなブログで、Tech Blogとして情報発信をおこなっていました)。
またEngineering Blog自体はメルカリのみに限らず、メルペイ、ソウゾウを含むメルカリグループすべてのエンジニアが利用できます。エンジニアたちが主体的に発信し、コミュニティにその経験や知見を還元していくことで、業界全体を活性化・成長させていくカルチャーを育てています。
こうした活動の甲斐もあってか、おかげさまで日本CTO協会が2022年に実施した、エンジニアが選ぶ開発者体験が良いイメージのある企業ランキングでも1位に選出いただきました。
Engineering Blogの定常的な計測
これまでEngineering Blogを含む技術広報活動では明確なKPIを持たず、「継続するための仕組み」「発信しやすい状況」を整えることを主な目標としていました。というのも、前述の通り、メルカリでは技術情報の発信はカルチャーの一環であり、数値的なKPIを追うのではなく、主体的なアクションを促していく仕組み作りが是とされていたからです。
しかし、組織が成長していくことによって、上記「継続するための仕組み」「発信しやすい状況」を実際に作り出せているのか、またそれはどのように測れるのか、について問い直す必要性が出てきました。また自分たちがおこなっている活動がどれくらいのインパクトを生み出せたのか、他のオウンドメディアと比較してどれくらい影響力を持っているのか、費用対効果がどれくらいあるのかなどの効果測定・検証をしていく重要性も増していました。
こうした背景から、Engineering Blogについては複数の指標に対して、定常的な計測をおこなうことになりました。具体的にはGoogle Analytics (UA・GA4)と、CMSのDBに格納されている情報を組み合わせたデータを元に、定量的な計測を実施しています。ビジュアライゼーションにはLooker Studioのダッシュボードを使っています。
Webからのトラフィック(PVや訪問ユーザー数、国内・海外からのトラフィック比率など)についてはGoogle Analyticsの計測でも十分ですが、内部的な指標と組み合わせるためにCMSのDB情報をLooker Studioのデータソースとして読み込ませ、Google Analyticsデータとの統合をおこなっています。ちなみに内部的な指標には、以下のような例があります:
- 記事の言語別(日本語・英語)の公開数
- 特定の記事カテゴリ・タグ(プログラミング言語など)の記事数
- 期間中にはじめてブログを書いた人が何人いたか
- 継続的に書いている人がどれくらいいるか
Engineering Blog 1年間の振り返り
計測方法の概要が見えてきたところで、2022年のEngineering Blogはどうだったのかを、実際にダッシュボードの一部を交えて見ていきましょう。
合計発信数
公開している記事の本数については、月ごとと四半期ごとの期間で、そして言語別(日本語と英語)でウォッチしています。
図から見えるように2022年1月〜12月現在の間に公開された総記事数は251本でした。言語の内訳は日本語が165本、英語が86本と、日本語での発信が過半数です。
昨年のデータを見てみると、日本語が159本、英語が58本となっています。全体の公開記事数も順調に増加していますが、昨年と比較すると英語での比率が増えてきているのが分かります。メルカリではエンジニアメンバーの半数以上が外国籍であり、英語でのナレッジ発信が増えているのはよい傾向だと捉えられると同時に、今後の組織拡大に大きな意味を持っています。
また先日11/30付でEngineering Blogで公開された記事数がついに累計1,000記事に到達しました…!ここまでたくさんの記事を発信できたのも、日々忙しい合間を縫って執筆してくれているエンジニアたちの協力の賜物だと実感しています。
ただ、常に安定的に記事を公開できているかと言われるとそうではありません。月ごとの公開記事数を見てみると、年初・年末の公開記事数と比べて、年の半ば(7~9月)はあまり記事が公開されていないのが分かります。これはAdvent CalendarやMerpay Openness Monthのようなブログ企画が年初・年末に集中している季節性の理由や、単純にプロジェクトの進行具合によって書ける内容がなかったり、書く時間がなかったりすることによるものが大きいです。
今後はこうした季節性の企画に依存することなく、年間を通して記事を発信できる仕組みを作っていくことが重要だと考えています。
ちなみに少し遡って2020年から見てみると、2021年後半から一気にブログの投稿数が伸びているのがわかると思います。メルカリ・メルペイはもちろん、メルカリShopsの開発・運営をするソウゾウにも情報発信の文化が根強くあるため、定期的にプロジェクトの振り返りを連載シリーズとして執筆・公開してくれているためです。
初めてブログを投稿した人数
また最近計測を始めた数値で、「初めてブログを投稿した人と人数」という数値があります。継続的にブログを書いてくれる人がいることも大事ですが、新しくジョインしてくれたメンバーや、これまでブログを書いたことのない人にもその経験・知見を対外的にシェアしてもらうことが、メルカリエンジニア組織としての情報発信の底上げに繋がるためです。もちろん、継続的に発信をしているメンバーの数もウォッチしています。
こちらの数値を見ると、今年は新たに145名の方が初めてEngineering Blogに投稿をしてくれました。2021年のデータではこの数値が128名だったため、ブログを通じた情報発信については安定的に新しいメンバーが発信してくれていると考えられます。今後もこの数字をベンチマークとしてウォッチしていきたいと思います。
最も多く閲覧された記事
最後にEngineering Blogで今年最も多く閲覧された記事の上位3つをピックアップしてみました。今回は2022年1月〜12月現在の間に公開された記事の中で、日本語・英語のそれぞれでPVが多かった順にセレクトしていきます。まずは日本語記事のセレクションです。
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GraphQLを導入する時に考えておいたほうが良いこと
ソウゾウの@sue71による、メルカリShopsのGraphQLサーバーの実装に関する記事で、今年3月の公開から定常的に閲覧されています。昨年8月にオープンしたメルカリShopsリリースを振り返って、GraphQLサーバー実装における課題やtipsをまとめてあります。 -
メルカリWebのマイクロサービス化、その4年
8月末に公開されたばかりの記事ですが、一気に上位に入ってきたのがこちらの記事。2018年から始まったメルカリWeb版の大規模改修を描いた長編で、4年に渡るアーキテクチャのMicroservice化の記録が詰まっています(多くのexメルカリ社員の方にも見ていただけたようです!) -
Elasticsearch運用ノウハウ
メルカリの検索基盤であるElasticsearchの運用について@jimo1001が執筆した記事で、今年の初めに連載されていたDPE Campの紹介シリーズの一つとして紹介されました。
続いて英語記事のセレクションはこちら。
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Building a simple search API
こちらは2021年にメルペイの@orfeonより公開された記事の翻訳版です(Engineering Officeでは過去に公開された記事の英訳対応等も実施しています)。メルペイのソリューションチームでは、社内のデータ周りの課題を解決するソリューション提供をしており、この記事では簡易的な検索機能の提供方法について紹介しています。 -
Securing Terraform monorepo CI
メルカリではTerraformを活用したインフラのコード管理をおこなっていますが、そこで直面したセキュリティの課題と状況の改善方法について@dtan4が解説をしています。ちなみにこの記事はHashicorpの公式ニュースレターにも掲載いただきました(日本語版も公開しているのでぜひチェックしてみてください) -
Blog Series of Introduction of Developer Productivity Engineering at Mercari
@deeeeeet率いるDeveloper Productivity Engineering (DPE) Campチームが今年の1月から約2ヶ月に渡っておこなったEngineering Blog連載の中でも一番の長期連載です。DevOpsやインフラなどメルカリの生命線を維持する複数のチームからなるDPE Campがどういった取り組みをおこなっているのかについて、各チームのエンジニアたちが経験・知見をシェアしています。
継続的な計測に向けて
今回はメルカリの技術情報発信の中核であるEngineering Blogの定常的な計測に向けた取り組みと数値の事例、そして2022年のざっくりとしたまとめを紹介いたしました。
「数字を追っていく」と書くと、ノルマを達成しなければならないようなイメージがあります。しかし、自分たちのカルチャーをちゃんと維持できているか、また仕組みが機能していると言えるのかを、可視化した上でヘルスチェック的な意味合いで継続的に見ていくことが必要だと考えています。
もちろん技術発信全体で見ればEngineering Blogだけに限らず、YouTubeチャンネルやDev Twitterの他、技術カンファレンスでの登壇などさまざまな発信経路があるため、それらすべてを網羅的に計測することは難しいといえます。ただ数字だけがすべてではないため、定性的な情報も組み合わせていけるように、少しずつ計測の幅を広げつつ改善していこうと考えています。
今後ともMercari Engineering Blogをよろしくお願いいたします!
Advent Calendarはまだまだ始まったばかり!明日の記事はCI/CDチームのmichaelfです。引き続きお楽しみください。