循環型社会:持続可能なeコマースについてのレポート

循環型社会:持続可能なeコマースについてのレポート

消費者の環境への意識の高まりに対応する長期的な解決策

こんにちは!
Advanced Technology TeamのPramendraです。
Advanced Technology Teamでは、世界中のビジネスおよびテクノロジーの動向を調査しています。

今後、調査から分かったことを5回に分けて発信していきますので、乞うご期待!
第一回目のレポートでは、サステナビリティとは?そして、サステナビリティが特にeコマースの領域において、どのように実現されているかについて書いていきます。

ご存知ですか?

イギリス人は 一度しか着ない夏服に27億ポンド費やしています

1年間で12億トンもの温室効果ガスを排出 – 国際飛行便と海上輸送の総排出量を超えています。

EUは国際炭素税の概要を発表

輸入品を生産するために排出される二酸化炭素(CO2)は、CO2排出1トン当たり50ユーロ(61米ドル)以上まで増加。

サステナビリティとは、自然資源を枯渇させずに、長期的に地球の生体的均衡を促進する行動を指します。つまりは、サステナビリティは、次世代の人たちが自分たちのニーズを満たすための能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすためのバランスを保つことだと一般的に考えられています。消費者は、現代文化の特徴の一つでもある効率性、すなわち超高速配送や使い捨てのプラスチック梱包材などは、地球の限られた資源を考えると、持続可能ではないことに気づき始めています。

平均すると衣服の73%は廃棄され、うち95%は再利用やリサイクルされていません。日常的に製品を世界中に出荷することで、排出量や梱包材の廃棄量が増えています。世界の温室効果ガス(GHG)排出量の60%は私たち消費者の責任です。

ニールセン社のデータによりますと、グローバル消費者の81%は、企業は環境改善に努めるべきだと考えています。使用済の商品を中古品として購入すると、その製品の二酸化炭素、廃棄物、ウォーターフットプリントを82%削減することができます。消費者市場におけるサステナブル商品は、2018年に1139億ドルの売上を達成し、2023年までに1405億ドルに達すると見込まれています。

各ブランドは様々な方法でサステナビリティ戦略を導入することができます。

  • ビジネスモデル
  • 梱包と配送
  • バリューチェーン

循環型社会:サステナビリティの未来

社会の持続可能性に対する懸念が強まるとともに、循環型社会への関心も高まっています。現在の世界のサプライチェインのビジネスモデルは、今後も持続できるものではありません。各国は廃棄物を削減するための方針を策定し、廃棄物管理の責任を強化しています。多くのブランドは循環型社会の概念を取り入れ、ビジネス慣習の見直しを行なっています。また、独自の循環型社会のマーケットプレイスを構築したスタートアップも多数あります。

画像著作権:出典

循環型社会は、社会全体にポジティブな影響を与えることに注力することで、成長を再定義しようとしています。主に、製品の再利用、修理、リサイクルに力を入れています。循環型社会の三原則は下記の通りです。

  • 設計の段階から廃棄物や汚染物質を排除する
  • 製品や資材を使い続ける
  • 自然のシステムを再生する

サステナブルなeコマースの重要性

eコマースは拡大していて、今後、縮小していく兆しが全くありません。しかし、eコマースが拡大すると共に、環境フットプリントも増加しています。eコマースがこの持続可能な社会に向けた革命に参加すべき理由は次の通りです。

より幅広い顧客基盤を惹きつける

88%の消費者は、商品をオンラインで購入する場合でも、実店舗で購入する場合でも、事前にネットで商品について下調べします。さらに、消費者は環境に対する影響を減らすために購入パターンを変えてもいいと考えていて、実際に57%が行動を変える意思があると回答しています。
サステナビリティを重視する方の70%以上が、サステナブルブランドに平均35%の割増料金を支払うと回答しています。

将来も持続可能なオペレーションの設計

地球は、50年前と比較して3倍以上の量の原材料を消費しています。将来にわたって持続可能なサプライチェインのオペレーションを構築するためには、サステナブルな活動や取り組みが必要となります。

株主からの信頼を維持

個人投資家の約85%は持続可能な投資への関心を高めており、2年前と比べて10%増加しました。例えば、サステナビリティの評価が高いウォルマートのサプライヤーは、HSBCとサステナビリティ・コンソーシアムから金銭的な報酬を受け取ることができます。また、パフォーマンスの高いサプライヤーは、HSBCの優遇金利を受けることができます。

サステナビリティは利益を意味する

いわゆる「資源を採取して、作って、捨てる」という従来型のビジネスモデルに対する国民の目が厳しくなる中、企業は循環型社会を受け入れ、環境認証の取得を強化する過程で利益を生み出すことができます。リジリエントな社会を構築し、環境問題を解決することに人々の関心が集まっている今こそ、循環型社会に投資するべきです。もし、投資家がこのような革新的な機会を利用すれば、これからの世代の人たちは新しい時代における経済的、環境的、社会的恩恵を受けることができます。

トッププレーヤーによるサステナビリティに対する取り組み

2024年までに、修理や改装がリサイクルや寄附を上回ると予想されています。小売業界は2019年から2021年にかけて15%縮小する一方、オンラインでの中古品の取引が69%伸びると見込まれています。ここでは、eコマースによるサステナビリティのユースケースをいくつか紹介していきます。

1 メルカリ

  • ビジョン:限りある資源が大切に使われ、誰もが新たな価値を生みだせる社会へ
  • メルカリは、より豊かな社会を目指すため、5つのテーマに取り組んでいます
    • 循環型社会の実現/気候変動への対応
    • ダイバーシティ&インクルージョンの体現
    • 地域活性化
    • 安心・安全・公正な取引環境の実現
    • コーポレートガバナンス・コンプライアンス

2 アリババ

  • アリババグループのロジスティックス企業であるCainiaoは「環境にやさしい梱包」を含む、グリーン物流プロジェクトを推進しています。
  • 生分解性素材を使った梱包材やガムテープ不要の段ボールを利用したり、梱包材をリサイクルできるステーションを設置したり、ソーラーパネルを導入した環境にやさしい倉庫を利用しています。
  • 段ボールのサイズを最適化するアルゴリズムを開発し、梱包材の使用を~15%削減しました。

3 アマゾン

  • 梱包を最適化するために統計モデルを活用し、商品の損傷とコストを削減してます。
  • 2020年時点で、MLツールを活用することによって段ボールの使用を69%から42%に削減し、代わりに緩衝材付きの封筒を使用しています。
  • メール便(緩衝材付きの封筒)の方が段ボールと比べて75%も軽く、配送スペースも40%削減できます。

4 Etsy

  • インディーズ系メーカー向けのグローバルオンラインマーケットを提供しているEtsyは、発送による二酸化炭素の排出量を完全にオフセットすることを目指しています。
  • 商品が購入される度、環境にポジティブな影響を創造することによって炭素の排出をオフセットします。
  • 3Degreesとのパートナーシップを通して行う、カーボンオフセットプログラムの例:
    • 支援しなければ伐採されるミネソタ州の森林の保護
    • インドでの風力および太陽光発電のプロジェクトの支援
    • 環境にやさしい軽量自動車の部品生産手段への投資

5 ThredUP

  • 消費者向けの再販マーケットプレイスであるThredUPは、3万5千点以上のブランドを取り扱うことで顧客にアピール。
  • 販売者は、商品を入れる袋を事前に購入し、受け取った袋に買い取ってもらいたい商品を入れます。袋を集荷してもらい、再販可能と判断された商品に関して料金が支払われます。
  • 顧客は、ThredUpのウェブサイトに掲載された古着を購入します。

6 Walmart

  • 2017年にプロジェクト・ギガトンを発表し、サプライチェーンから排出されるCO2換算排出量を1ギガトン削減する大胆な目標を掲げました。
  • 本プロジェクトにコミットした1000社以上のサプライヤーとともに、すでに9300万tの二酸化炭素排出量を削減

スタートアップ企業は循環型社会を事業に活用

競争力を持ち続けるためには、戦略的優位性を維持する必要があります。最近のテクノロジーの進歩や様々な業界における劇的な進化を考慮すると、排出される大量の二酸化炭素と、それに伴う地球汚染は想像に難くないと思います。また、モノを無駄にしたり、そのゴミを埋立地や焼却炉への輸送しないといけないという問題もあります。

デジタル時代における循環型社会により、企業は製品について有益な情報を集めながら、品質やトレーサビリティも確保できます。今までの環境保護活動は、主に再生可能エネルギーを中心に行われてきましたが、気候変動に対応するためには、製品の生産・使用方法を根本的に見直す必要があります。下記は、製品に循環型社会のビジネスモデルを導入した企業の例です。

Grover社、電子機器のレンタルサービスで10億ドル達成

  • ユーザーは、月単位で電子機器をレンタルできます。
    • 初期投資が必要なくなり、且つ全額支払って購入したり、お金のやりくりを心配したりすることなく、より柔軟に最新のテクノロジーを使うことができます。
  • 会員は、3000点以上の製品の中から選ぶことができます。
  • レンタル期間が終了する間際に、顧客は製品を購入するか、返送するか、毎月のレンタルを継続するか選択します。
  • 返送された製品は「ほぼ新品」の状態に改修され、ゴミにならず、再び使用されるように再循環します。

ピア・ツー・ピアのレンタルマーケットプレイスであるWardrobeがRent My Wardrobeを買収

  • 高級およびヴィンテージファッションのP2PレンタルマーケットプレイスのWardrobeがRent My Wardrobeを買収。Rent My Wardrobeは、米国南部で人気のあるダラスを拠点としたP2Pのレンタルビジネスです。
  • Rent My Wardrobeは、最近400万ドルの価値があるとして評価されました。
    • ユーザーは、アプリ上で自身のクローゼットを共有でき、衣服の貸し出しや返却を直接相手と調整。

LK Bennettがファッションのレンタルサービスをローンチ

  • 衣服を無制限にレンタルができる会員制サービス、LK Borrowedをローンチ。
  • 月額110ドル支払うと、会員は2つのアイテムが入ったボックスを受け取り、発送も荷受も無料で無制限にアイテムを交換できます。また、環境にやさしいクリーニングも無償で提供。
  • 顧客は、1つずつもしくは2つまとめて衣服を交換することができ、自分だけの最高の衣装部屋を作り上げることができます。

イギリスがトレンドの先頭に立つ

  • イギリスでレンタルに対する需要が高まっている理由の一つは、罪悪感を感じることなくファッションを消費できるからです。
  • バーナードが2019年に実施した調査によりますと、イギリス人が一度しか着用せずに捨てた夏服の額は27億ポンドにのぼります。
  • 一度しか着ない洋服のために、繊維業界は年間12億トンもの温室効果ガスを排出 – 国際飛行便と海上輸送の総排出量を超えています。

再販のテックスタートアップ企業のTroveは7750万ドルの資金を調達

  • 今日までに1億2250万ドル調達。
  • パートナーシップ提携するブランドを「大幅に拡大」、技術・物流のインフラを強化、高級品にも参入して、ヨーロッパの買い物客にリーチを広げました。
  • 中古品市場とパートナーシップを組んでいるブランド以外にも、最近はREI、 Patagonia、Nordstrom、Levi’s、 Eileen Fisher、Lululemonなどの小売業者やブランドともパートナーシップを提携。
  • 100万件以上の商品を処理し、昨年は2019年の3倍にもあたる1000万件以上のカタログレコードに対応。

UXを変える新しいテクノロジー

技術の発展に伴い、これからも効率が高まっていくと予想される中、一番の課題はいかにしてモノが直線的に流れていく社会から循環型の社会へと移行していくかです。つまりは、今まで「廃棄」されてきたモノを社会に取り組むことによって、資源の消費や環境への影響を削減していく必要があります。技術の進歩は、循環型社会のビジネスモデルを開発して導入する触媒として作用し、eコマース業界もその例外ではありません。知らず知らずに持続可能なeコマースに一翼担っている技術をいくつか紹介していきます。

衣服の試着や計測にARを活用

2023年までにVR/ARの利用は2倍近くになると予想されています。
VR/ARは、ユーザーの体験を向上させるために美容やファッション業界で使用されていて、消費者の行動や将来に対する期待も変わってきています。

新型コロナウィルスの影響で、ヘルス業界もこの環境変化に適応し、規制や慣習を変えています。マーケットプレイスは、技術を活用してオンラインで実店舗にいるような体験を提供しています。例えば、

  • 没入型の体験
  • インタラクティブな体験
  • パーソナライズされたレコメンデーション

AIを活用しておすすめサイズの提案

デジタル計測技術を使って、スマートフォンで計測を行うことができます。計測は、カメラもしくはガジェットのセンサー(ジャイロスコープ、アクセラレータ)を使用して行います。どちらの方法も特許技術と人工知能(AI)を採用して精度を高めています。コロナ禍で、技術の採択が飛躍的に増え、精度やユーザー体験の向上がさらに人気を後押ししました。

衣服は最も人気のあるカテゴリーの一つですが、適切なサイズを選ぶことができないと転換率が下がってしまいます。身体サイズの測定は、お客様のお買い物を手助けし、サイズが合わないことによる再購入や返品を削減することができる新しい技術です。

AIを活用して、カーボンフットプリントに対する意識を高める

革新的な技術を使わない限り、気候変動に影響を与えるような対策を実行することができません。企業はサステナブルで低炭素なビジネスモデルを導入することによって、2030年までに12兆ドル節約し、収益を生み出すことができます。メルカリでは、ユーザーがカーボンフットプリントを確認し、削減できる方法を表示するオプションを考案。本機能のインパクトを高めることによって、カーボンフットプリントを管理し、正しい方向に向かって変化をもたらすことができているかを確認できます。

主な学び

近年、顧客の買い物習慣は劇的に進化

最近は、事前に計画を立てて買う物を決めてから購入するよりも、衝動買いする顧客が増えています。また、他の活動に従事しているときに衝動買いをする傾向があります。

サステナビリティが転換点に達した

消費者は、社会的問題により深く関わるようになるにつれ、自分の価値観と一致する商品や企業を探し求めます。調査の結果、調査対象者の半分以上が環境への影響を削減するために買い物習慣を改める意思があると回答しています。

循環型社会による影響

消費者のサステナビリティに対する関心の高まりにより、多くの大手企業は従来のやり方が通用しなくなり、新しい機会が生まれています。「循環型社会」はより注目を集め、レンタルや中古品の購入など、今までとは異なる方法で商品を手に入れる手段が提供されています。

まとめ

eコマースと環境サステナビリティは両立でき、サステナブルな取り組みをオンラインビジネスに取り入れることは、ビジネスを成功させる素晴らしいチャンスでもあります。消費者と小売業者は、変化している現実に適応しなければいけません。サステナブルなビジネスを中心とする新しい時代では、大胆で未来を先導する責任を持った人たちが間違いなく報われます。

eコマースは、環境保護に一翼を担っており、環境意識がさらに高まる中、顧客もその重要性に気づき始めています。また、地球にやさしい配送とサステナビリティの実現に加え、フェアでサステナブルなプロダクトデザインも求められています。

地球にやさしいeコマースへの切り替えは、特に長い目で見たときに、必ずしも多くの投資を必要としているものではありません。マーケティングにも役立ち、市場での責任ある企業としての強いブランドイメージを得ることができます。今こそが、この知識を活用し、ビジネスにサステナブルな戦略を導入するときです。

革新的なアイディアを持った人たちをインスパイアし、繋がることで、新興技術に熱心な方々と強いコミュニティを構築し、より良い社会を作ることを目指していきます。一緒に取り組めば、新しいアイディアも生まれます。一緒にイノベーションを生み出しましょう!

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次回もまた、調査結果のレポート記事を掲載していく予定です。

Advanced Tech Team

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