この記事は、Mercari Advent Calendar 2023 の18日目の記事になります。
こんにちは!メルカリ Engineering Office チームの@aisakaです。
私達のチームは「Establish a Resilient Engineering Organization」というミッションを元に、様々な活動を行なっています。先日のAdvent calendarでマネージャーのhiroiさんがチームの活動の内容、目的の紹介をしているので、ぜひこちらも読んでみてください。
強いエンジニア組織に必要な、6つの技術以外のこと – メルカリ編
私はEngineering Officeがカバーする領域の中でもOnboardingを担当していて、よりよいOnboarding体験を提供していくための戦略や仕組みづくりに携わっています。
OnboardingやトレーニングといったHR領域に近い施策というのは、KPIを立てづらく、かかるコスト(人的コストやお金)に対する効果を測定しづいといった悩みが一般的ですよね。
本記事では、メルカリのエンジニアリング組織がどのようにKPIをたて、効果測定を実施しているのか、またOnboarding施策を成功させるためのポイントを紹介していきます。
エンジニア組織の組織課題に取り組んでいる方や施策づくりをしている方におすすめです。
費用対効果の最大化
組織の施策を企画し実施、運用するうえで最も大事なポイントは、いかにROI(費用対効果)を意識し、その最大化に繋げられるかです。ここでは、メルカリが実際に実施している4つのポイントを紹介していきます。
コンテンツの集約
組織が大きくなると、蓄積される知識や情報量が多くなる反面、点在しやすく正しい情報にリーチしづらいというダウンサイドもあります。最適な量の正しい情報へのガイドがOnboardingを成功させるために重要だと考えているため、メルカリではOnboardingコンテンツの集約には力をいれて取り組んでいます。冗長なコンテンツは一つにまとめ、コンテンツを置く場所を一箇所に集約することで、入社者が何か分からないことがあった際に自力で検索して探し出せるような導線を作っています。
継続的なアップデートサイクル
コンテンツというのは、一定期間アップデートがされないとすぐに古い情報となってしまい使えないという側面ももっています。メルカリは中途採用、新卒採用を通年行っているため、Onboardingで必要なコンテンツは比較的利用頻度が高く、古いコンテンツにならないようにすることが重要です。
Onboardingで必要な作業の文書化やコンテンツの見直しに貢献してくれるエンジニアを半年ごとに公募で募集し、有志メンバーで資料のアップデートや作成を継続的に実施しています。また、新入社員の方も自身のOnboardingの過程で、情報のアップデートや文書化へのコントリビューションを奨励しています。
またコントリビューションは可視化し、貢献してくれたかたへの評価に繋がるように運営を工夫しています。
利用者数の可視化
せっかく質の高いコンテンツを整備しても、実際に使ってもらえないと意味がありません。コンテンツが見られているのか、使われているのかを評価するため、MAU(Monthly Active Users)とPageviewsをトラッキングし、資料の利用率を評価しています。
一般的にコンテンツに関する指標は、サーベイで満足度を入社者にヒアリングするケースが多いですが、サーベイは回答負荷が高く充分な回答数が得られなかったり、回答者の主観が強すぎたりするため、自動でとれて客観性が高いものを指標として評価しています。
以前、マネージャーのGrahamさんが、サーベイ疲れを最小限にしつつフィードバックをもらうための方法をブログで書いていたので、ぜひ参考にしてみてください。
Looker Studioのスクリーンショットより
「安易にサーベイに頼らない。」という心がけは、不要な負荷を生み出さないという点において施策づくりの際にとても重要だと感じています。
オペレーションの自動化
運営側のコストを削減する視点もとても重要です。HR領域の施策はどうしてもマニュアルで管理する場合が多いですが、できるかぎりプロセスの一部を自動化し、運営側のオペレーションコスト削減にも力をいれています。
メルカリでは、OnboardingのアクションアイテムをJIRAチケットで提供していますが、入社者ごとにカスタマイズしたチケットを自動でJIRAに払い出すシステムを内製し運用しています。
以前は複数のチェックリストがHR、Engineering組織、各チームで点在していて分かりづらいといった課題があったのですが、それをJIRAで一元管理できるようにしています。
こうしたコスト削減や効率化をはかるための自動化システムの内製もEngineering Office内では積極的に実施しています。
デリバリーの最大化
良いコンテンツを社内で作ったら、それをより多くの方へ届けることで、効果を最大化することができます。どのように届け、その効果を大きくするために、実践している2つのポイントを紹介していきます。
他部署、専門外の技術領域を学びたい人へ届ける
適切にアップデートされた良いコンテンツは、新入社員だけではなく、既存のメンバーのラーニングにも役立ちます。コンテンツを誰もがアクセスできる場所に集約させ、他部署や専門外の技術領域を学びたい方も必要な情報にアクセスできるようになっています。実際、MAUをみてみると既存メンバーからのアクセスは新入社員の人数の数倍近くあり、幅広い方に利用されています。
また、メルカリでは年に1~2回、DevDojoと呼ばれる技術研修期間を設けています。もともとは新卒向けのOnboarding トレーニングとして設計され企画されたものでしたが、新卒以外の既存社員も受講できるように社内でオープンにしています。毎回、部署を超えた50名近くの既存社員が参加しトレーニングを受講しています。
社外発信に繋げ、コンテンツ作成者のキャリアップに繋げる
持続的にコンテンツを作成、アップデートし、社内で展開していくうえで最も重要なことは、コンテンツ作成者からの協力を常に得られる状態にすることです。社内向けのコンテンツ作成というのはボランティアベースになってしまうケースがよくあるパターンです。しかし、この運用方法ではコンテンツ作成者にメリットがなく労力を無駄にしてしまうリスクがあります。メルカリでは、社内コンテンツを一部エンジニア組織のカルチャーや人を紹介するMercari Gears YouTubeチャンネルにおいて外部公開することで、コンテンツ作成がTech PR (技術発信)と個人のビジビリティの向上といったキャリアアップに繋がるように工夫しています。
こうした、コンテンツ作成者、コンテンツ受講者の両方がWin-Winとなるように施策づくりをすることで、持続的なサービスを提供できています。
今後力をいれていきたい分野
エンジニアという職種は比較的転職サイクルが早いため、メルカリは中途採用での入社者が多いです。そこで、前職までの環境からメルカリのエンジニア組織への移行をいかにスムーズにするかという視点がとても重要です。
メルカリでは、新入社員がインプットする情報、知識の量とクオリティのレベルをある程度統一し、入社直後の時期から標準化された知識を学習できるようにしています。こうした、健全な組織を維持、発展していく体制をOnboardingという一番最初の段階から整えていくことに力をいれています。Onboardingの時期は過去のやり方から脱却し、新しいことを比較的受け入れやすい時期でもあるため、今後最も力をいれて作っていきたい分野です。
最後に
これまで、3年ほどエンジニア組織のOnboarding施策を担当しました。成功に必要なポイントをまとめます。
- コンテンツは一箇所に集約することで、利用者がリーチしやすくする
- コンテンツを継続的にアップデートし続ける仕組みをつくる
- KPIはサーベイに頼らず、自動で取れるものを指標にする
- オペレーションは自動化し、運営コストを削減する
- より多くの人に届ける
- コンテンツ作成者のキャリアアップや評価に繋がる仕組みにする
- 健全な組織づくりのため、ガバナンス強化という視点をもつ
こうした施策づくりというのは一朝一夕ではできず、トライアンドエラーを繰り返し、他のエンジニアの皆さんのサポートを得ながら皆なで少しづつ作ってきました。
今回ご紹介したポイントは決してOnboardingだけでなく、多くの施策づくりに応用が効くと感じます。何か少しでも参考になるものがあれば嬉しいです。
また、メルカリグループでは、積極的にエンジニアを採用しています。ご興味ある方、ぜひご連絡お待ちしております!
Open position – Engineering at Mercari
長文となりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。