アンケート疲れから考えるフィードバック獲得の改善方法

要約

ビジネス環境においてフィードバックを得るのは簡単なことではないかもしれません。その点、アンケートは良い方法のように思えますが、期待どおりの結果を得るには、注意しなければならないことがあります。

アンケートから得たいことを明確にしましょう – アンケートは良い投票システムとは言えません。後で結果を返すようにしないと、回答者はアンケートでフィードバックを返すのをやめてしまいます。

一般に、多くのアンケートは回答者を疲れさせてしまいがちで、その結果、チャンスを失っています。また、私が「survey blindness(アンケートによる盲目化)」と呼んでいる現象があります。回答者はあまりに多くのアンケートを目にするために、どれに答えたかわからなくなり、アンケートに答え損ねてしまうのです。

より手っ取り早くてもっといい方法として、個人や小グループの対象者と対面で話をするという方法があります。

私たちの経験から、回答者は、アンケートによってどのような変化が促進されるのかを理解すると、アンケートに対する認識が高まるということがわかりました。

はじめに

「アンケートから役に立つ情報は得られているか?」

数ヵ月前、私たちのチームはこのような問いかけを始めました。業務上、私たちは多くのアンケートを行っています。毎回の全社会議やその他の大きな集まり、イベントなどではそれぞれ独自のアンケートを行っていました。

私たちのような比較的小さなチームでさえ、多くのアンケートを担当していました。「フィードバックフォーム」と呼ぶこともありましたが、これらは見た目も中身も基本的にはアンケートと同じでした。

時には、返ってくるアンケートの数がイベントの人気を測る指標の1つだと考えたりしたものです。けれども、そうではないことがよくあるということもわかりました。返ってきたアンケートの数がイベントの良し悪しと無関係ということもよくあります。
私は手始めに、アンケートについて十分に考察するために、その過程、設計方法、目標、アンケートで収集した情報をどのように活用したかについてチームに尋ねてみました。

さまざまな発見がありました。

始めに言っておきますが、すべてのアンケートが悪いわけではありません。私たちの場合、まるでアンケートという立派なハンマーに、釘のようにたくさんのやり取りや「フィードバック」を必要とする質問が用意されているかのような状態になっていたということです。

私がこのことに疑問を感じるようになったのは、単純に会話で「アンケート」という言葉を聞いた人の反応からです。あきれてうんざりというのが大抵の反応でした。また、大きなイベントのアンケート回答率が1桁だったり、大規模なアンケート調査で自由回答欄には何も書かれていないということも何度かありました。こうしたことから、アンケートは効果的な投票システムではないという論点も見えてきました。

これは明らかに、間違った使い方をしているか、使い過ぎかの徴候です。

釘とハンマーのどちらが先だったのかはわかりません。おそらく、Googleフォームを見つけた誰かが、オンボーディングセッションに対するみんなの感想を知りたいと頼まれてアンケートを作成し、それが毎月のように使われるようになったといったところでしょう。

最近では、ご存じのように新型コロナウイルス感染症の拡大によって多くの人が2年以上も在宅勤務をすることになり、気軽に会って誰かの意見を聞くことや、雰囲気を察することが急に難しくなったため、ミーティングやイベントがうまくいったのか、どのような点を改善すればよいのかなどを知るために、簡単な質問をするのはいい考えだと思われるようになったのです。

私たちはまた、アンケートをイベントの人気や満足度を推測するKPI(重要業績評価指標)として使い始めました。これは、ある種の投票システムとして提出されるアンケートフォームの数を評価するのと非常に近い意味合いもあります。

設計

こうした多くのアンケートに最後まで回答し、実際にクリックしてたくさんのアンケートに答えてきた結果、私は「このアンケートはどのように使われるのだろう?」「責任者は誰なのだろう?」「どうしてこの情報が必要なのだろう?」「私のコメントはどうなるのだろう?」などと考えるようになりました。

この答えはすぐにはまったくわかりませんでした。自分たちのチームが担当するアンケートに関してさえもです。フィードバックに対してどのような対応ができるのかも、それをアンケートに答えてくれた人にどのようにして伝えればいいのかも、そもそもわかりませんでした。

私たちが質問していたのは、イベントは役に立ったか、長すぎなかったか、短すぎなかったか、テーマは興味のあるものだったかなどです。

よく使ったのが1から5までのスケールでの評価です。1が「役に立たなかった」、5が「非常に先進的だった」などです。多くの評価システムと同じように、この方法も結果を歪める傾向にありました。特に記名式の場合は、4か5の評価がほとんどでした。
自由回答欄がある場合でも記入されていないことがほとんどで、得られたフィードバックの大半の理由はわかりませんでした。

また、質問はかなり一般的なものだったので、しばらくすると似たようなフォームはすべて渾然一体となっていきました。

もちろん、フォーム作成ソフトは、星や「非常に役に立った」から「まったく役に立たなかった」までのスケールがテンプレートになっているものも多く、このスタイルに適した設計になっていることもあります。また、私たちはたくさん質問をするほど粒度の高い情報が得られると考えてしまうことがあります。けれども、必ずしもそうではありません。

アンケートを行ったり、フィードバックが欲しい理由は無限にあり、テーマも多種多様です。ですから、設計に絶対的な正解や不正解はありません。けれども、より良いものにすることができることはわかっていました。

どのように見えるとしても、アンケートは双方向ツールだということに私たちは気が付きました。質の高い情報を手に入れたい場合は、プロセス全体をより良いものにするために、私たちも情報を提供する必要があったのです。

より良いものにするために、基本的なレベルで回答者に次のことを理解してもらうようにする必要がありました。

アンケートへの記入を求める理由。

誰のためのアンケートか。

情報の使い道。

アンケートの結果実施したことに対するフィードバックはいつ、どのように提供されるのか。

私たちは欲しいデータの価値と、それに対する行動をどのように計画するかを検討することから始めました。

例えば、研修セミナーであれば、「長すぎましたか?」と尋ねるより、
「説明の時間は、システムについてよく理解するのに十分でしたか?」と尋ねたり、
「講師の[マイクロサービス]、[クラウドインテグレーション]、[セキュリティ要素]についての説明は短すぎたり長すぎたりしましたか?」と尋ねるほうが効果的かもしれません。

一般的な質問をする代わりに、よりイベントに合わせた質問をし、それ以外のことは自由回答欄で拾うようにするべきです。

定期的なイベントの場合、これは明らかなことかもしれません。そう考えると、このようにしてより良いデータを手に入れない理由などあるでしょうか?ここで注意しなければならないことがあります。繰り返されるイベントから再現可能なデータを得たい場合は、おそらく、年間を通して、中心となる質問とセッションごとの具体的な質問を用意する必要があります。

話をする

同じ時期に、開発者体験の一環として、私たちはエンジニアリングマネージャー(EM)一人ひとりと30分間、事前に内容をほとんど決めることなく話し合いを行うことを決め、これを「Outreach and Visibility(見える化)」プロジェクトと呼びました。
このプロセスを始めてまもなく、EMもアンケートのことが気になっているのだということがわかりました。

「なぜこんなに多くのアンケートをするのか?」という質問も多かったのですが、一番多かった質問は、「こうしたアンケートによってどのような変化が促進されたのか?」というものでした。

これは私たちの感覚とも重なる部分がありました。多くのアンケートを実施しましたが、伝達方法の変化についてはどうだったでしょうか。私たちは実際に多くの社内サービスを改善しました。アップデートし、改善し、必要ないものは廃止しました。では、何が食い違っていたのでしょうか。私たちは、熱心にアンケートを送り、結果について調べ、分析し、その結果も回答者に送ってきました。けれども、その結果、何を変えたのかは伝えてこなかったのです。

多くの場合、とても単純なことでした。なぜ変更したのかを伝えてこなかったのです。変更した理由がフィードバックやアンケートによるものであっても、そのことを回答者に伝えていなかったわけです。この点を変える必要がありました。プレゼンテーションの終わりやSlackチャンネルで例を挙げるときに、この話にもっと触れなければならなかったのです。フィードバックへの感謝が必要でした。ここから私たちは、Engineering Ladderにアップデートを示す方法をより明確にするようにしました。

また、定期的な「Outreach and Visibility(見える化)」の話し合いは好評だったため、継続してさらにフィードバックを集め、懸念に耳を傾け、その中で、得られたフィードバックから行っていることを伝えたり、改善点を示したりもしています。同時に、フィードバックフォームのいくつかを廃止し、Slackで直接フィードバックするよう勧めています。

おわりに

ビジネスから情報を得ることは、動きの速い業界では非常に重要です。アンケートはこのために有効なツールですが、他のツールと同じように、それぞれの課題ごとに正しく設計して使う必要があります。1種類ですべてを済まそうとすればエンドユーザは疲弊し、フィードバックの質が低下してしまいます。

究極的には、話をするという選択肢は常にあります。このハイブリッドなビジネスの世界で、それはテレビ会議で行われるかもしれませんし、オフィスで行われるかもしれません。1対1で行われるかもしれませんし、小グループで行われるかもしれません。けれども、それはいつでも可能です。

どのような方法を選ぶとしても、回答者に、その回答のおかげで改善がなされたのだということを説明し、この循環を完結させることが不可欠なのです。

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