即時配送:自律走行型配送ロボットに関するレポート

こんにちは!
Advanced TechnologyチームのPramendraです。
Advanced Technologyチームは、世界中のビジネスおよびテクノロジーの動向を調査しています。

今回、皆さんに再び新しいレポートをお届けできるのを嬉しく思います。前回はソーシャルコマースを特集しましたが、今回は自律型ロボットとその影響について紹介します。

知っていますか?

自律走行型配送ロボットとは?


画像著作権:出典

自律走行型配送ロボット(ADR)とはモーター駆動の電動車を指し、人間が介在することなくモノを顧客に届けることができます。これらのロボットに荷物を乗せ、最終目的地まで移動した後に顧客が荷物を下ろします。配送対象となるのは食料品や日用品です。ADRは多くの業界で使用されており、特にヘルスケア、病院、物流、小売での使用が顕著です。

トレンドの背景

市場環境


画像著作権:出典

ADR市場の成長速度が最も速いのはアジア太平洋地域ですが、最大の市場は北米にあります。多数のeコマース顧客を擁する北米は、アジア太平洋地域に次いで第二のeコマース市場となっており、米国単体だけで人口の80%がオンラインショッピングを使用しています。これは、eコマース市場が巨大になると、小売からサプライチェーンへの投資が促されることを意味しています。こういった投資の1つがADR領域なのです。

資金調達のトレンド

主な要因

現在の状況に加え、新たに生まれているトレンドによってADRはさらに多くの業界に普及しつつあります。その普及を後押しする要因をいくつか紹介します。

人口の高齢化

65歳以上の世界人口は、2050年までに6.9%から 20%と3倍に増加する見込みであり、最も急速に高齢化が進む日本ではこの年齢層が現在28.2%を占めています。そのため、高齢化が進む産業界の労働力不足を補うべく、ロボットが採用されているのです。高齢化に対して、ADRは2つの側面でインパクトをもたらします。労働者の採用がますます困難になる中、ADRは差し迫った労働力不足の問題に対応できるほか、高齢者のケア(食料品・日用品の配送や看護)を担うことができます。いずれにしても、企業にとってADRはその使用を最大限に活用できる機会となります。日本郵便楽天などの企業はすでにADRに参入しています。

配送

コロナ禍によって物流量が急速に増加しています。これによって、エンドユーザーへの配送過程において最終段階となる「ラストワンマイル」に負荷が生じています。 配送は発注額の20%という高いコストがかかり、ラストワンマイルはサプライチェーンコスト全体の41%を占めることから、eコマース事業者、とりわけ小規模事業者にとって既に配送はブロッカーとなっています。ADRを使用することで、配送コストを20分の1に削減することが可能となります。

画像著作権:出典

ソーシャルコマース

ソーシャルコマースの規模は890億ドルにのぼり、今後7年間で6050億ドルにまで成長する見込みです。ソーシャルメディアで買い物をする消費者は増え続け、消費者の81%はFacebookやInstagramで商品を検索しています。また、米国のソーシャルコマースの売上は2021年に35%以上増加し360億ドルを超える見込みです。精算プロセスを統合することによって、ソーシャルメディアはストレスのない購入体験を提供しています。配送と輸送ビジネスは、この変化に対応できるようにキャッチアップが必要です。このギャップを埋められるのが自律走行型配送です。

サステナビリティ

消費者の間で環境への意識が高りつつある中、環境負荷の少ない商品の購入や利用が広まっています。消費者の56%は、地元で生産されたものを購入したり、近隣の店舗を優先して買い物をしたりしています。消費者の75%は、今後1年間は地元で生産されたものの購入を増やす意向があります。これがローカルコマースの形です。長距離配送を抑えることができるほか、オンライン注文1回あたりのカーボンフットプリントを低減できるといった理由からローカルコマースの人気が高まりつつあります。ADRでは、配送によって生じるCO2排出量を12%低減できることから、グリーンエネルギー配送とローカルコマースの両方の取り組みにマッチします。


画像著作権:出典

ADR独自のバリュープロポジション

市場では、その他の配送方法に比べてADRが優れている点があります。ここでは、ADR独自のバリュープロポジションをいくつか紹介します。

コストパフォーンマンス

ADRは、より安全な方法でより長い距離を走行できることから、コストを抑えつつ多くの顧客にサービスを提供できます。これによって、企業は配送費と人件費の両方を抑えることができます。

エネルギー効率が高い

これに対し、小型のADRは電気自動車の利用率が高いことから、ロボットのエネルギー効率が上がります。さらに、地球温暖化への対応として策定されている各種法規制(例:2050年までの達成を目指す欧州委員会の脱炭素化目標)によっても、ADRのさらなる普及が後押しされています。

需要の増加

グローバルのeコマースやオムニチャネル小売業者、ラストワンマイル配送の増加によって、ADRの需要が押し上げられています。また、コロナ禍では、消費者の間で非対面の配送に対する需要が高まりました。

ADRの種類

ADRの自律走行型配送は、屋内と屋外で使用が分かれます。その結果、屋内用ADRと屋外用ADRがあります。

ADRのユースケース

スマートシティ:自律走行型車両がもたらす影響

自律走行型車両の技術を活用することにより、スマートシティにおける都市のモビリティが促進すると考えられています。最も大掛かりなスマートシティ推進策として、関係府省がスマートシティ関連事業として支援していく62地域、74事業を選定したプロジェクトがあります。最近実施したスマートモビリティチャレンジと比較して、支援対象地域・事業は2倍となっています。事業は多岐に渡り、地方や都市環境での社会実装を目指すソリューションが多くあります。特に自律走行、ドローン、発券システムの統合、オンデマンドモビリティなど、地域密着を重視した事業が多く含まれています。プロジェクトが成功すれば、デジタル化に向けた大きな一歩となるでしょう。

トッププレイヤー


画像著作権:出典

ADRの市場は競争が激しく、多くの大手プレイヤーから構成されています。マーケットシェアを見ますと、大手のプレイヤー数社がマーケットを独占していて、海外に顧客基盤を拡大することに注力しています。

画像著作権:出典

ADR分野のトッププレイヤーの一社であるStarships Technologiesは、2014年に設立以来、自律走行型ロボットを用いた配送が100万件に到達しました。Starshipは、レストランの食事をUCLAやブリッジウォーター州立大学など、米国のキャンパスに配達します。多くの人たちが制限の多い生活を強いられている中、Starshipのロボットは、非接触で食事や食品・日用品を配送するサービスを提供しています。コロナウィルスの世界的な流行により、サービスを提供している地域での需要が5倍に伸びました。

新興企業

ADRを活用している企業

アリババグループのロボットXiaomanlvは、eコマース商品の配送におけるマイルストーンを達成

  • ローンチしてから1年も経たずにロボットは100万個以上の小包を配送。
  • 22省、52都市以上に渡り、20万人以上の顧客に配達。
  • 1回の配送で50個以上の荷物を運び、一日あたり〜500個の荷物を配送。
  • 今後3年でロボット型車両を200台から1万台まで増やす予定。

日本郵便の配送ロボットが東京でデビュー

  • 人との接触を最小限に抑えることが求められる中、自動運転の郵便配送ロボットを展開。
  • 内蔵されたカメラやセンサーを使ってロボットは歩道を走行。
  • 実証実験は9月に開始し、10月末まで実施。
  • 高齢化社会に伴う深刻な労働力不足の緩和につながることが期待されています。

楽天の自動運転配送ロボットが横須賀の公道を走行

  • 神奈川県横須賀市で配送ロボットが走行。
  • 赤い配送ロボットにはスーパーの商品を積み、4つの車輪で走行。
  • パナソニックが製造した無人走行車両(UGV:Unmanned Ground Vehicle)を採用。
  • 高齢者など、曲がりくねった道を移動するのが困難な住民をターゲットとしています。

将来の見通し

顧客は、ソーシャルディスタンスやステイホームが習慣化してきました。日常生活で自律走行型ロボットや車両が使われることも受け入れるようにもなりました。これから、ADRとの未来についての事例をいくつか紹介します。

商品の配送が最も成長が期待できる分野

2020年、64%の顧客はホリデーシーズンのお買い物をオンラインで行い、このような行動変容は長期的な影響をもたらすと考えられています。オンラインでのお買い物を好む傾向は、コロナ後も継続する見込みです。従って、商品配送の分野は更に自律走行のテクノロジーを取り込んでいくと思われます。

高速道路での大型トレーラートラックやラストワンマイルの配送に活用

自律走行に関連する技術の利益性や安全性は高まっています。トラックの自律走行に関する大型開発も行われており、Waymo自律走行型トラックの研究開発所を開設しました。また、Aurora、Ike、TuSimpleなどの企業は、実際の高速道路でトラックを自律走行させる技術の開発を推進させています。自律走行の技術を用いたラストワンマイルの配送も大きく飛躍しています。パンデミックにより、Refraction AIのレストラン配達ビジネスは次のレベルへ引き上げられ、夏にかけてスーパーの食料品・日用品の配送にも事業を広げる予定です。また、NuroやStarshipなどの企業も大幅な成長を達成しています。

より効率的で持続可能な街へ

既存のラストワンマイルの物流システムは、二酸化炭素を排出する車両から、排出ガスのない自律走行型車両へと移行しつつあります。電気自動車は、1マイルキロワットの消費量がADRのおおよそ7倍で、ADRの方が燃費効率が高いです。都市レベルでできる気候変動対策は限られていますが、このような取り組みは効果的なソリューションとなります。

LiDARは今後も成長し続け、上場する企業も増えてくる

LiDARセンサーと予測ソフトウェアを提供するイスラエルのInnoviz Technologiesが株式を公開し、市場価格は14億ドルと予想されています。このように技術が進化し、成熟するに伴い、LiDARを扱う企業の多くが今後、上場すると考えられます。Appleが自動運転車両を生産していることもLiDARの今後の市場の動向を示す指標と言えます。

自律走行型車両企業の統合・合併

AmazonがZooxを買収し、Uber ATGが自動運転部門をAuroraに売却しました。多くの資金を投資しているにも関わらず、業界の動きはゆっくりとしています。プレイヤーは、実用化そして利益を出すまでに長い冬の時期を覚悟しなければなりません。

まとめ

自動化を取り入れるか否かを決める際、それを実現するために直近で何が必要かを検討することが鍵となります。また、変化に対応し、将来も使い続けることができる技術を搭載することも重要です。自律走行型ロボットは、ラストワンマイル配送において、よりコスト効率が高く、持続可能な代替手段となります。ラストワンマイル配送に留まらずやその他のユースケースについては、モバイルロボットを活用することができます。

参考文献:

  • X
  • Facebook
  • linkedin
  • このエントリーをはてなブックマークに追加