mercari R4DでファッションテックとARを研究している@ashyanagisawaです。先日、文化服装学院で特別講義をした際に使用したインスピレーション用のマップを公開します。選定基準は「次世代ファッションに繋がるか」です。新しい世界観を示した「FUTURE VISION」と次世代ファッションへ繋がりそうなカテゴリを16個に分類し、記載しました。
- FUTURE VISION
- SMART CLOTHES
- SMART GLOVES & WRISTBANDS
- SMART RING
- SMART GLASSES
- AR HEADSETS
- VR HEADSETS
- PRINTING
- DESIGNING
- AUTHORING
- PHOTOGRAMMETRY
- AVATAR & ASSISTANT
- SHOPPING
- COMMUNICATION
- MEASUREMENT
- FITTING
- まとめ
FUTURE VISION
Sight
by Robot Genius
人がスマートコンタクトレンズをつけた世界を表現。人の日常生活に寄り添っており、支援するための情報が表示している。顔を認識して情報表示している場面を実現するためには、プライバシー問題を解決する必要性がある。
https://www.instagram.com/p/BuXiCoOHQCo/
Dan Danielin Di Danielle
by @thekidzzzzz
ダンスや歌詞の意味を視覚的に表現。人や衣服だけでなく、背景もデジタルデータで拡張し、自己表現している。現状の衣服ではこのような表現は不可能だが、ARを用いると様々な表現が可能になる。
Byted Effect 2.0
by ByteDance AI Lab
カメラ画像を処理することで、人の脚を長く魅せる表現。小顔エフェクトは既に一般的だが、その他の部位に対するエフェクトが登場しました。リアルタイムに等身の異なるアバターを生成できるかもしれない。
SMART CLOTHES
Levi’s Commuter X Jacquard By Google
by Google and Livi’s
袖口に導電性繊維が縫い込まれているスマートジャケット。タッチやスワイプすることで、音楽の再生や曲送り等のスマホ操作が可能。筋電センサが様々な箇所に配置できるようになれば、フィットネス分野で重宝されそう。
Skiincore Heated Base Layer
by SKIIN Intelligent Interface
特定位置の温度がスマホで調整できる服。昨今、新規性のある服は登場していないので、次はスマホで操作できる服がファッション業界に影響を与えるはず。衣服内の温度や湿度の自動調整が可能になれば、厚着する必要がなくなり、冬でも軽装ができる。
Nadi X Yoga Pants
by Wearable X
生地に縫い付けられているセンサーでお尻・膝・足首等の各部位の動きを追跡し、振動によるフィードバックで正しいポーズをガイドしてくれるヨガパンツ。ポーズの矯正はフォームが大切なスポーツでも役に立ちそう。
SMART GLOVES & WRISTBANDS
BeBop Data Glove
by BeBop Data Glove
指の位置を取得できるグローブ型モーションコントローラー。現状のVTuberは事前に設定したハンドアニメーションを再生するだけだったが、更に滑らかな動きが可能になるので、アバターの再現性が向上するはず。
Ultra-light Gloves
by EPFL and ETH Zurich
物を握ったフィードバックが返ってくるグローブ型端末。全ての指が対応されれば、VR上のショッピングで触覚という情報が得られそう。今後、素材の手触りも感じる端末も発表されれば、インテリア等は直接買いに行く必要がなくなるかもしれない。
CTRL-kit
by CTRL-Labs
筋電センサで手の動きを取得できるリストバンド型端末。手のジェスチャを取得したい場合、グローブ型やハンドヘルド型コントローラー、トラッキング用のカメラ等が不必要なので、屋外でも利用されそう。
SMART RING
Xenxo S-Ring
by Xenxo
通話やNFC決済が可能なスマートリング。装着しているだけで、iDに対応した決済サービスが可能なので、スマホをポケットから取り出す必要がなくなる。顔と虹彩認証が一般的になりつつあるが、リングによる認証解除も毎日身につけるのであれば、良いかもしれない。
Motiv
by Motiv
睡眠時間や心拍数の計測が可能なスマートリング。病気の早期発見が可能になるかもしれない。リングは毎日身につけることができるので、計測した肌のデータに基づいて、肌荒れ防止策を提供するのも良さそう。
Smarty Ring
by Smarty Ring
ディスプレイがあるリング。通知のみなら、スマートウォッチまでの大きさは必要ないかもしれない。RPGのアイテムのように、「今日はこの能力を使う」と決め、リングを毎日変えるのも面白そう。
“” SMART SHOES
Nike Adapt BB
by Nike
自動的に足にフィットするスニーカー。着用者は最も履き心地の良い形の靴を得ることができる。靴メーカーは靴のサイズを0.5cm毎に用意する必要がなくなり、廃棄される可能性が格段に減る。
E-vone
by E-VONE
着用者がどこにいるか確認できるスニーカー。スニーカーはリングや眼鏡に比べサイズが大きいので、高性能コンピュータを搭載できる。ソールを変えるだけで、機能が変わっても面白いかもしれない。
Orphe Track
by no new fork studio
足の動きのデータから機械学習を行い、ランニングフォームのコーチングや健康状態のアドバイスするスニーカー。人によって歩き方に癖があるから毎日履いて、太りにくい身体を目指したい。
SMART GLASSES
Vuzix Blade
by Vuzix
カメラが搭載されたスマートグラスの中で最も既存の眼鏡に近いスマートグラス。高性能なARヘッドセットはサイズが大きく屋外で目立つが、この端末は人に二度見をされないメリットが存在する。しかし、カメラ搭載端末はいつでも撮影できてしまうので、プライバシーを考慮した手法を考える必要がある。
DigiLens Crystal
by DigiLens
スマホの情報を有線接続して表示するスマートグラス。スマホの性能が向上するにつれ、可能なことが増えるメリットは大きいが、現状は画面を共有するのみ。スマートグラスに搭載したカメラ画像をスマホで処理できるようになれば、ARヘッドセットの小型化がより一層進むはず。
Focals
by North
単独で動作するスマートグラスの中で最も既存の眼鏡に近い端末。網膜走査の特許をIntelから買収しており、視野角が広がる可能性がある。カメラ搭載のスマートグラスより先に、非搭載端末の方が早く一般化しそう。
AR HEADSETS
HoloLens 2
by Microsoft
虹彩認証まで可能な業務利用に特化した複合現実ヘッドセット。将来的には偽造が難しいといわれている網膜認証への移行もできそう。カメラ画像が特定のジェスチャーのみでしか、取得できないようにすれば、プライバシー侵害を軽減できるかもしれない。
Magic Leap One
by Magic Leap
巨額な投資を受けたMagic LeapのARヘッドセット。日本は技適問題とHoloLensユーザが多いこともあり、当端末の普及が遅い印象がある。ペンタブレットを開発するワコムと共同開発しているクリエイター向けのアプリに期待。
Project North Star
by Leap Motion
最も手の指の追跡精度が高いLeap Motionを用いたヘッドセット。オープンソースとして公開されているので、誰でも作ることができる。今後も手を使った多くの操作が生まれるはずなので、引き続き状況を追いたい。
VR HEADSETS
Vive Pro Eye
by HTC
眼の視線の動きを取得できるVRヘッドセット。視線が加わることで更に自然なアバターになりきることが可能なる。また、ユーザの視線の情報、どの商品をどのぐらい注目しているかに応じて、求めているであろう商品のみを提案することができる。
Oculus Quest
by Oculus
PCとの接続が不要で、低価格なVRヘッドセット。高性能PCを準備する必要がなく、ハンドヘルドコントローラーを2個持てるメリットは大きい。更に低価格になればユーザーが増え、クリエイターコミュニティが活性化されるかもしれない。
Varjo VR-1
by Varjo
人の眼と同じ解像度のVRヘッドセット。服の素材等の再現度が向上するので、VR上のショッピングで本物と知覚する可能性がある。湾曲するディスプレイが流行しているが、その技術を利用した人の視野角以上で眼と同じ解像度のヘッドセットを体験してみたい。
PRINTING
Mobile Nail Printer H1
by O2Nails
指定した画像でネイルアートが楽しめるプリンター。全ての指を自動で塗ることが可能になれば、日常使いされそう。個人が持つには比較的高価なので、美容院が髪を切ってる間にネイルも自動でケアするサービスがあっても、良いかも。
Danit Peleg
by Danit Peleg
3Dプリンターで出力した生地を組み合わせた服を提供するブランド。一般的な生地では不可能な形が可能なので、表現の幅は広がる。トルソーを中心に服を自動でつくる3D Fabric Printerは存在したので、3Dソフトでデザインしたデータが次の日に着れるという世界が訪れるかもしれない。
King Children
by King Children
スマホのカメラで計測し、3Dプリンターで出力した眼鏡を提供するブランド。D2Cの代表的な事例だと思う。耳の形にあったイヤホンを販売する会社も存在するので、既成品ではないユーザにあった商品は引き続き需要が高まりそう。
DESIGNING
8 by Yoox
by Yoox
自社ECサイトの売買履歴やSNS等のトレンドを収集し、収集したデータをもとにデザイナーがデザインするブランド。トレンドを追いかけるための市場調査の必要がなくなるので、効率的かつ高確率で売れる商品を提供できる。今後もデータの収集と学習をおこなえば、売れる商品を自動的に用意するAIデザイナーが登場するはず。
Amazon AI Fashion Designer
by Amazon
複数の対象が協力し合ってお互い成長していく教師なし学習のモデルGAN(Generative Adversarial Networks) を用いて、服をデザイン。衣服は同じ型紙(パターン)を使用されることが多いので、グレーディング(同じ形を違うサイズに作ること)やトレンドにあったシルエットへ変更が自動にできるかもしれない。
Philipp Plein
by Philipp Plein
人型ロボットと人が同じランウェイを歩くコレクション。一般用ロボットとの共生が実現した場合、ロボットの外観を変えたい需要は増えるはず。人や動物の服をつくるだけがファッションではない。
AUTHORING
Marvelous Designer
by CLO Virtual Fashion
バーチャルな衣服を制作するのに最適な3DCGソフト。縫い代まで対応したら、服作りに活用する人が更に増えるかもしれないが、現状はバーチャル用途に特化している。一着まるごと編むことができる島精機製作所のホールガーメントとの相性は良さそう。
Tilt Brush
by Google
VR上でペイントツールで絵が描けるアプリ。自動的に穴を塞ぐ技術があったら、3Dプリンタのデータ作成に使われそう。工業デザインで使える3Dモデル制作ツールのGravity Sketchと共に注目していきたい。
Project Aero
by Adobe
AdobeのPhotoshopやDimensionで制作した3DデータをARで確認できるアプリ。3Dプリンタで出力ができ、実空間へのアプローチが可能になれば、空間デザインのオリジナリティが増すかもしれない。
PHOTOGRAMMETRY
Avatar SDK
by itSeez3D
正面の顔写真をもとに、アバターを生成するSDK(ソフトウェア開発キット)。自身のアバターが簡単につくれるので、VR上のアバターが更に増えそう。GANを用いることで、唯一無二の顔を生成することが可能になる。
Scandy Pro
by Scandy
iPhone Xから搭載されたTrueDepthカメラを用いて3Dスキャンするアプリ。こういった端末の普及率があがれば、写真ではなく3Dデータを使った表現方法が主流になりそう。しかし、スキャンに時間を要するので、UI/UXは考える必要がある。
Matterport
by Matterport
建物の中の正確な3Dデータを生成が可能なカメラで、空間を精密に再現。遠方の人に展示会を見てもらう時に重宝されるかもしれない。Google MapsのAR機能はユーザのカメラ画像から屋外の3Dデータを収集できそうだけど、どうするんだろう。
AVATAR & ASSISTANT
Yoox Mirror
by Yoox
ECサイト内の履歴をもとにアバタでコーディネート提案するサービス。普及には、現実の店舗内やVR上でのファッションショーではなく、人の暮らしにそったサービスにする必要がありそう。
Mica
by Magic Leap
様々な表情を持つAIアシスタント。人間として知覚するには表情が大事というのをあらためて理解。Google MapsのAR機能である狐アバターと同様に、常にサポートしてくれるアシスタントが目の前に存在する世界は近そう。しかし、横断歩道上に表示すると、事故に巻き込まれる可能性があるという課題がある。
Shudu
by @shudu.gram
インスタグラムで15万人以上のフォロワーがいるスーパーモデル。いずれは人と区別がつかないレベルまで達しそう。あとは服の3Dデータさえ簡単につくることができれば、現実のモデルより稼ぐ可能性もある。
SHOPPING
Prime Day VR
by Amazon
インドのイベント会場で体験ができたVR上でのショッピング。一般化するためには、多くの課題が存在しそう。日常使いできる方法の模索や視覚・聴覚以外の拡張、ヘッドセットの軽量化など。
Amazon Go
by Amazon
センサを用いてレジのないコンビニを実現。服の試着が自由にできて、着たまま外出できる実店舗は需要ありそう。また、展示会形式で実物だけを置いて、購入されたら発送というのも良さそう。
Mercari
by mercari R4D
指を指すだけで対象の情報が取得できるアプリ。世の中の情報はこの方法で全て調べられる時代がくるかもしれない。指をさした物体、かつ人は検索しないのでプライバシーを尊重している。
COMMUNICATION
VRChat
by VRChat
VRヘッドセットと自身で用意した3Dアバターを用いて、人と会話できるアプリ。現状はエンタメ系のコンテンツが多いが、日常的にVR上でリアルマネーを稼ぐことができれば、更に普及しそう。
Spatial
by Spatial Systems
事前にカメラで撮影した顔をもとに3Dアバターを生成、扱うことで遠方の人と打ち合わせができるサービス。毎日、会社に出勤しなくてもよい世界になりそうだが、さぼる人もいるという課題が存在する。
Holoportation
by Microsoft
対象となる人物の周りにカメラを置き、リアルタイムに3Dデータを生成、共有する技術。遠方に在住の人と違和感なく、話すことが可能。PhotogrammetryのAvatar SDK同様に前面から後面を推定してあげることで、カメラ一台で対応が可能かもしれない。
MEASUREMENT
NAKED
by Naked Labs
体型の測定が可能なスマートミラー。毎日、目の前に立つ鏡はカメラを使用した計測に適してる。Alexa搭載のスマートミラーは存在するので、Amazonの商品と連動した試着サービスの登場は近いかもしれない。
SAIA 3D
by 3DLOOK
身体の正面と側面を撮影するだけで、計測だけでなく、3Dデータを生成できるサービス。服作りの世界は数ミリの誤差が致命的なので、精度の向上に期待。それでも360度の画像が必要ではないメリットは大きい。
KAYAK Bag Measurement Tool
by KAYAK Software
飛行機のチェックイン前に荷物のサイズが確認できるアプリ。いずれはカメラをかざしただけで服のウエストや肩幅等のサイズが計測できるかもしれません。建物の計測も例外ではありません。
FITTING
YouCam Makeup
by Perfect
小物の試着やメイクの体験、肌の状態を確認できるアプリ。日常で使用する鏡にこのアプリが搭載されれば、日常的に使えそう。いずれは自動でメイクをしてくれるプリンターも登場するかもしれない。
Virtual Nail Salon
by ModiFace
手の爪の上に選択した画像を表示し、ネイルアート体験が可能なアプリ。この技術がネイルプリンターに搭載されれば、プリント前に確認できるので、失敗が減りそう。また、同時に指輪とコーディネートできても良いかもしれない。
Wanna Kicks
by WANNABY
スニーカーの3Dデータの試着体験が可能なアプリ。特徵が少ない足をここまで追跡できる精度はすごい。靴の内部を調整できるスニーカー等と組み合わせ、履き心地を確認できるようにするのも良いかもしれない。
まとめ
以上が、ファッション業界出身のエンジニアが次世代ファッションを考えた場合のインスピレーション用マップでした。ファッションテックに少しでも興味を持っていただけたのであれば、嬉しいです。一緒に盛り上げていきましょう!
インスピレーション用マップのPDFも公開しています。
ファッション業界の方向けが今後を考える上で役立つ(と嬉しいな)インスピレーションマップを「リンク付きのPDFファイル(以下URL)」にしました。https://t.co/yiJP4LWkif pic.twitter.com/K5LFMMJDff
— Ash at FASHION TECH LAB in TOKYO (@ashyanagisawa) August 30, 2019