※この記事は、Mercari Advent Calendar 2022 の5日目の記事です。
こんにちは。メルカリのエンジニア組織開発を担当するチーム「Engineering Office」で、主にInternal Engagementを担当している@afroscriptです。
最近、私は「エンジニア組織内のコミュニケーション最適化」に取り組み始めました。そのプロジェクトの第一歩として、以下のことを整理しました。
- 組織内コミュニケーションにはどのようなものがあるのか?
- 組織内コミュニケーションの理想状態はどのようなものか?
このプロジェクトはまだ始まったばかりです。そのため、プロジェクトを進めるうちにこの定義も変わっていくかもしれませんし、まだブラッシュアップが甘い部分も多々あるかもしれません。ですが、せっかくのアドベントカレンダーの季節なので、現段階で整理できた部分をシェアしてみようと思います。
「自分の会社ではこう考えているよ!」とか「こういう取り組みしているよ!」といったお声があれば、ぜひコメント、フィードバックお待ちしております。
エンジニア組織内のコミュニケーション最適化を行う背景
メルカリ全体の成長に伴い、組織の規模もだんだんと大きくなってきた昨今。組織構造も縦に横に広がっており、それに伴いエンジニア組織内でもコミュニケーション経路が複雑になってきてました。なんとなく課題がありそうな気がしつつも、その実態がなかなか把握しづらい状況です。
また「組織内コミュニケーション」という言葉自体も曖昧なもので、理想的な状態も定義できておらず、最適化を考えるとしてもどの方向に改善を進めていくべきかも考えづらいという課題もあります。
今後さらに組織が拡大していくに伴い、さらなる組織内コミュニケーションの複雑化が進むことが考えられるため、現段階での組織内コミュニケーションの理想的な状態を定義し、理想状態と現状の差分を明確にし、その差分を埋めるための打ち手を講じていこうということで、このプロジェクトが始まりました。
コミュニケーションとは?
「コミュニケーション」という言葉はかなり広義に捉えることができるため、まず最初にこのプロジェクトにおける「コミュニケーション」を下記のように定義しました。
コミュニケーション = 「2人、あるいはそれ以上の複数者間で、なんらかの目的を持って意思疎通を行うこと」
(もちろん、この定義以外にも、例えば自分の中で自分と対話して内省するような1人で完結するコミュニケーションなどもありますが、今回は組織内のメンバー同士のコミュニケーションの最適化を考えているので、そのようなコミュニケーションはスコープ外としました。)
この定義からすると、意思疎通の「目的」はなにか、また意思疎通を行うのは「誰」と「誰」なのかという2軸によって、コミュニケーションを分類できるのではと考えました。
目的によるコミュニケーションの分類
コミュニケーションの目的もまた多岐にわたります。私たちが整理した上で一番しっくりきたのは、下記の4つの分類でした。
- ①意思決定: なにかしらの結論を出す、決める (決めないことを決めることも含む)
- ②発散: アイディアを出す、意見交換をする
- ③伝達: 情報 (進捗 / 状況 / 課題 / 想いなど) を伝える
- ④関係性構築: 気軽に雑談できるカジュアルな人間関係から本音を言い合える信頼関係までを構築する、心理的安全性の強化
各コミュニケーション手段は、これらの目的のうち1つ、あるいは複数をもつと考えています。
意思疎通者の組み合わせによるコミュニケーションの分類
「誰」と「誰」がコミュニケーションをとるかについても様々な切り口が考えられますが、今回はマネジメント階層で分類してみました。理由としては、社内の組織情報の伝達はトップダウンやボトムアップといった、マネジメント階層を上下する流れで行われることが多いので、社内コミュニケーションの整理にフィットしそうと考えたためです。
メルカリのエンジニア組織のマネジメント層による分類を図で整理すると下記のようになります。
(ちなみに上図は、Managerial Communication for Organizational Development という書籍のChapter1で紹介されている図を参考にしています。組織内コミュニケーションを考える上ですごく参考になるオススメ書籍です。)
また、Top ManagementとMiddle Managementには、下記のRoleを持った人たちが含まれています。
- Top Management: CTO, VPs, Directors
- Middle Management: Engineering Heads*, Engineering Manager, Manager of Managers
この図を元に意思疎通者の組み合わせを考えると下記のパターンが考えられます。最後の「(6) Members同士のコミュニケーション」のみ、チーム内外でのコミュニケーションで性質や手段が異なるためさらに細分化しています。
- (1) Top ManagementとMembers間のコミュニケーション
- (2) Top ManagementとMiddle Management間のコミュニケーション
- (3) Middle ManagementとMembers間のコミュニケーション
- (4) Top Management同士のコミュニケーション
- (5) Middle Management同士のコミュニケーション
- (6) Members同士のコミュニケーション
- (6-1) チーム外のメンバーとのコミュニケーション
- (6-2) チーム内のメンバーとのコミュニケーション
なお、Manager of ManagerとEngineering Managerの階層を分けるなど、より細かくマネジメント階層を分類することもできますが、4階層以上にするとその組み合わせが膨大になってしまうので、3つの階層で整理しています。
* Engineering Headsとは?
メルカリでは、通常のマネジメントラインとは別に、Campという独自の開発体制を取り入れており、開発に必要な職種がすべてそろったCampという単位で開発を進めています。各Campには、そのCamp内のProduct ManagersをリードするPM Headsと、EngineeringをリードするEngineering Headsがいます。Campの詳しい説明はこちら。
組織内コミュニケーションの28パターンと目指すべき理想像
ここまで、コミュニケーションの目的と、コミュニケーションを行う人の組み合わせパターンを考えてきました。これらを合わせて表にすると、下表のように組織内コミュニケーションにはどのようなものが存在するかが分かりやすく整理されます。
つまり、組織内コミュニケーションには、4通りの目的 × 7通りの意思疎通者の組み合わせ = 28パターンがあるということです。
この表を元に、究極的な理想状態を考えると「表内の28パターンすべてに対して、コミュニケーション手段が存在しており、その手段が各目的に対して十分に効果を発揮している状態」といえるのではないでしょうか。
とはいえ、それはあくまで理想の理想です。現実問題としては、組織のリソース制限がありすべてをカバーするのは難しいでしょうし、組織の文化によっては各目的ごとに重要度が違ったりするかもしれません。ですので、各組織の状況や文化に合わせて、この表のどの部分を埋める、どの部分を注力して強化する、といったゴールを設定するのが現実的な理想像になるかなと思います。
ちなみに、現在のメルカリのエンジニア組織内のコミュニケーション手段をマッピングすると下記のようになりました。
[A+] や [A] や [B]は、各目的に対して効果の強さを表しています。少し見づらいですが、パッと見て、例えば (1) Top ManagementとMembers間での、「発散」や「関係性構築」を目的としたコミュニケーション手段がないことや、(6-1) Members同士 (チーム外) のコミュニケーションはどの目的に対しても効果の強そうなコミュニケーション手段が用意できていない (「関係性構築」については、全社で行っているクラブ活動がありますが、エンジニアに特化した手段はない) ことが分かります。
これらのいずれかに施策を打っていくのがよさそうですが、どう優先順位をつけて、実際にどこから手を打つべきかはまさに今検討しているところです。
参考までに、現段階での私の仮説を書いておきます。ダニエル・キム氏の組織の成功循環モデルによると、組織の成果を向上させるには、関係性の質の向上を起点にするのがよいとのこと。それが思考の質を向上させ、行動の質の向上に繋がり、最終的に結果の質が上がるというものです。このモデルが参考になりそうだと考えており、(1) Top ManagementとMembers間、あるいは(6-1) Members同士 (チーム外) の「関係性構築」を目的としたコミュニケーションに対して、なんらかの打ち手を講じていくのが初手としてよいのではと当たりをつけています。
今後の展望
今回の記事では、組織内のコミュニケーションにはどのようなものがあり、究極的な理想像はなにかを、私なりに整理したものを紹介しました。
他にもいろんな整理方法がありそうだとは思いつつも、ひとまず組織内コミュニケーションの全体像を掴んだり、現状把握や最適化の方向性を考えるのには使えそうなものができたかなと思っています。
今後のステップとしては、下記を考えています。
- 各コミュニケーション手段が効果を発揮しているかどうかを、どのように測定・判断すべきかの整理 (現在の表の中の[A+] や [A] や [B]は、私の肌感で記入しているので、より客観的に判断できる方法を模索中です)
- 上記の判断基準により、本当に対策が必要な箇所を特定
- 特定されたものの中で、どう優先順位をつけるかの整理
- 具体的な打ち手の考案と実行
これらの今後の動きについては、またEngineering Blogで紹介できたらと思っていますので、ぜひお楽しみに。
明日のアドベントカレンダーは、@bungo によるメルカルグループでのFinOpsに関する取り組みの紹介です!こちらもお楽しみに!:)