はじめに
こんにちは。2025年度のBuild@Mercariに参加して、現在はメルカリのCS Tool Teamでインターンをしている@Aokaと申します。この記事では、私がBuild@Mercariに参加した感想や成長したことについて書いていきたいと思います。
Build@Mercariって何?
Build@Mercariとは、これまでさまざまな事情で機会が巡ってこなかった方、特にSTEM分野・IT分野におけるマイノリティである性自認が女性の方々を中心として、スキルトレーニングとインターンシップの機会を提供するプログラムです。
トレーニングの話
選考
Build@Mercariの選考は書類とコーディングテストの結果で進みます。他の多くのインターンシップとは異なり、面接がないのが特徴的でした。
書類審査では、これまでの自分の経験やBuild@Mercariに参加したい理由などを記入しました。コーディングテストについては、プログラミング言語の基礎文法を理解していれば解ける問題が中心で、競技プログラミングのような高度な問題ではありませんでした。
選考は志望理由とコーディングテストの結果を総合的に判断しますが、志望理由が重要視されているそうです。
初日のオリエンテーション
初日のみオフラインでの開催で、メンターや同じチームの参加者とオフラインで交流する機会がありました。また、GitHubを使った課題をみんなで進めて、使い方に慣れることができました。オフラインで交流できたことが二週間のトレーニング期間を通じて心の支えとなり、モチベーションを維持することができました。
トレーニングでやったこと
トレーニングではソフトウェアエンジニアリングに必要な基礎知識を一通り学びました。
トレーニング期間中は、5〜6人のチームにそれぞれメンターの方がついてくださる形で、各自が課題に取り組みました。課題の内容は以下の通りで、各STEPを進めながら、最終的にはメルカリのような商品を登録できるWebアプリを作りました。
- STEP1 Git
- STEP2 Setup environment
- STEP3 Algorithms and Data Structures
- STEP4 Develop API
- STEP5 Database
- STEP6 Writing Tests
- STEP7 Docker
- STEP8 Continuous Integration(CI)
- STEP9 (Stretch) Frontend
- STEP10 (Stretch) Run multi service
- EXTRA1 (Stretch) Data Analysis
トレーニング内容は公開されており、以下のレポジトリから確認できます。
https://github.com/mercari-build/mercari-build-training/tree/main
つまづいた時にメンターの方々にSlackで質問したり、課題の各STEPごとにレクチャーをしてくださったりと、手厚いサポートのおかげで、最後まで楽しく開発を続けることができました。
学んだこと
プログラム期間中はたくさんのことを学びましたが、特に以下の知識がついたと思います。
- Git, Githubを使ったチーム開発の基礎
- Backend開発の流れ
- DockerやCIなどインフラの知識
このトレーニングを通じての一番の大きな成長は、開発することに対する心理的なハードルが下がったことだと感じています。参加する前は、フロントエンドの開発しかしたことがなかったのですが、フロントエンドからインフラまでの基礎知識を身につけたことにより、新しい技術について学習する際や、開発でつまづいた時にどの領域の知識を深めていけばいいのか判断できるようになりました。
また、プログラムの参加者はUdemy Businessを1年間無料で使うことができます。はじめて学ぶ知識が多いなか、基礎から体系的に学習することができるので、非常に役にたちました。
難しかったこと
実装を始める前に、新しい概念を理解する必要があり、なぜこの技術が必要なのかというところから理解しなければならなかったことが大変でした。理解が浅いまま進めてしまうと、後でつまずくことが多かったため、基礎知識を身につけるためにUdemyの動画を視聴したり、AIとの壁打ちを通じて概念を整理したりして理解しながら進めました。
特に、STEP4のAPI開発では、Python言語を使用してRESTful APIを実装したのですが、デバッグ作業に苦労しました。エラーが発生した際に、どの部分でなぜエラーが起きているのかを特定するのが難しく感じました。しかし、この経験を通じてデバッグスキルの重要性を痛感するとともに、バグに対する耐性もついたと思います。
また、STEP7のDockerの部分が大変でした。初めてコンテナ技術に触れたため、仮想化の概念から始まり、イメージとコンテナの概念、Dockerfileの書き方まで、すべてが新しい知識でした。特に、依存関係の管理は理解するのに時間がかかり、何度もエラーと向き合いながら少しずつ実装を進めました。また、公式ドキュメントを読む大切さも学びました。はじめはとても読みづらく感じましたが、理解するのに大変役に立つことを実感しました。
自身の変化
プログラムを通して、技術力の向上はもちろんのこと、様々な方との関わりを通じて自分自身に大きな変化があったと感じています。
参加者の方々のバックグラウンドは多様で、情報系学部の人に限らず、文系学部や美術系学部の人、また高校生から社会人まで幅広い年齢層の方がいらっしゃいました。私のようにWeb開発が初心者の方も多かったです。
私がこのプログラムを修了できた最も大きな要因は、一緒に切磋琢磨し合える仲間がいたからだと感じています。お互いに教え合いながら頑張る雰囲気がとても心地よく、他の参加者の方々の進捗は良い刺激になりました。
また、プログラムの初日には社員の方々のキャリアに関するプレゼンテーションがあり、直接質問できる機会もいただきました。出産や子育てと仕事の両立、転職に関するお話など、貴重なお話を聞くことができ、自分自身のキャリアについて深く考える時間となりました。
Buildインターンの話
選考
トレーニング期間終了後、一定の基準を満たした参加者は、インターンシップへの応募資格を得ることができます。
選考プロセスでは面接が実施され、主にトレーニングを通じて得た学びや気づき、これまでの技術的な経験、そしてメルカリのバリューに対する理解や共感について質問されました。
選考通過後には、実際のインターンシップ開始前に事前面談の機会が設けられています。この面談では、配属予定のチームについての説明や、不安な点の相談などができるため、安心してインターンシップをスタートすることができました。
やったこと
タスクは、カスタマーサポート業務で使用される社内ツールであるCS ToolのPHPで記述されている既存エンドポイントをGo言語とマイクロサービスアーキテクチャで再構築するというものでした。
開発の背景として、CS Toolの多くの機能は古いモノリスなアプリケーションとして運用されています。古いBackendはPHPで書かれており、現在これを保守性の観点などから、新しいマイクロサービスアーキテクチャに移行する取り組みが進められています。
現在CS Toolでは、開発方針として既存機能の移行作業を進めながら、新機能については新しいサービスで開発するというルールがあり、今回私は前者を担当しました。
学んだこと
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新しい技術(Go, Kubernetes, gRPC)
アーキテクチャの概念が実際のサービス運用でどのように活用されているかを理解することができました。 -
Test QA Releaseの工程
実際の開発現場での品質管理プロセスを経験できました。単体テストの書き方から、QAのケースの作成と実施、リリースまで一連の流れを学ぶことができました。 -
コードの可読性を考える
自分だけが理解できるコードではなく、チームメンバー全員が理解できるコードを書くことの重要性を学びました。変数名や関数名の命名、レポジトリ内でコードの一貫性を保つことなど実務で重要なポイントを学ぶことができました。 -
コードの拡張性を意識する
将来的な機能追加や仕様変更に対応しやすいコード設計について学びました。将来的に、同じエンドポイントに新しいフィルターを追加するなどする時に、コードが書きやすいか考えました。
また、自身が書く部分が既存のエンドポイントの実装と関わっていたり、使う関数が似ていたりするときに、コードを分割したり、まとめたりすることの重要性を学びました。 -
AIの活用
メルカリでは、AIの活用も積極的に進められており、開発にはCursorなどのAIコーディングツールを使うことができました。ただし、やみくもにAIに頼るのではなく、知識をもった上で、生成されるであろう答えを予想してから入力することで、より効果的にツールを活用することが大切だと学びました。
インターンを通じて、今まで触れる機会のなかった大規模開発ならではの知識や技術を多く学ぶことができました。特に、前述のコードの可読性の点では、コードのみならず、PRやQAシートを作成する際にも、チームの人が理解しやすく、レビューをしやすいかどうかを意識して書くことの重要性を学びました。
またコードレビューを通じて、開発に必要なコードの書き方を具体的に学ぶことができました。自分の実装がベストプラクティスかどうか、様々な視点から評価していただけました。
特に印象的だったのは、単にこの書き方の方が良いと教えていただくだけでなく、なぜその書き方が推奨されるのかという理由まで丁寧に説明していただいたことです。例えば、エラーハンドリングの実装では、ただ起こりうるエラーを処理するだけでなく、適切なログ出力やユーザーが分かりやすいエラーメッセージを考慮する必要があることを学びました。
交流を通じた学び
チームでは定期的に勉強会が開催されており、チームに役に立ちそうな技術や知見を積極的に共有する文化がありました。難しい内容も多かったですが、CursorのMCP serverについての回は特に興味深かったです。
チームには地方に住んでいるメンバーも多くいましたが、普段はSlackで通話を繋いでコミュニケーションを取り、定期的に出社日を設けてオフラインでの交流機会を作ったり、チームビルディングイベントを開催したりと、チームのコミュニケーションを積極的に取ろうとされていることが印象的でした。
困った時はいつでも相談に乗っていただき、ペアプログラミングも積極的にしてくださいました。特に、課題がある時に手取り足取り教えるのではなく、私にとってよい学習機会になるようにサポートしてくださったのがとても印象的でした。
また、メンターランチや1on1での社員の方々との交流を通じ、自身のキャリアについて考えるとてもよい機会になりました。新卒入社の方のお話から、他の会社も経験された方のお話まで色々なバックグラウンドをお持ちの方との会話を通じて視野が広がりました。また、これからの大学生活に関して具体的なアドバイスをいただき、残り2年半の大学生活をどのように過ごすのか考える機会になりました。参加してくださった社員の方々に改めて感謝申し上げます。
終わりに
今回のBuild@Mercariとインターンでの経験を通じ、開発に必要な幅広い知識を身につけることができました。また、技術的な面以外でも多くの学びがありました。この半年間で得た学びを糧に、一流のエンジニアを目指して、さらに力をつけていきたいです。
このプログラム期間中、多くの方々にサポートしていただいたおかげで、ここまで成長することができました。Build@Mercariのメンターの皆さんや、インターン期間中にメンターをしてくださった@a-ukiさんをはじめとするCS Toolチームの皆さんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
※この体験記は2025年度(今年度)のプログラム内容です。来年度以降のプログラムにおいては内容が変更になる可能性がありますので、ご了承ください。