こんにちは!メルカリ Engineering Office チームの@kikoと@aisakaです。
この記事は、Mercari Advent Calendar 2025 の24日目の記事です。
先日の t-hiroi の記事「メルカリが、AI時代にナレッジマネジメントに投資したわけ」では、メルカリが推進するナレッジマネジメント戦略について紹介がありました。その中で特に重要なのが、AI-Native な会社を実現するためには 「AI が正しく学習できるコンテクスト(文脈)を整える」ことが不可欠であるという点です。
この考え方を軸に、メルカリでは全社を挙げてナレッジマネジメントを再設計してきました。
また先日も発表がありましたが、ナレッジの蓄積・共有基盤としてNotion の全社導入を進めています。
メルカリがNotion 全社導入で「AI-Native」企業への変革を加速
私たちは、このNotionを活用した全社ナレッジマネジメント基盤の構築・運用を担当しています。
本記事では、メルカリがどのように Notion 上でナレッジを整理しているのか、そしてその基盤となる Notion Architecture ver1.0をご紹介します!
Notion Architectureとは
Notion Architectureは、Mercariグループにおける情報を「構造的に」「一貫して」「AIが活用しやすい形で」管理するための設計指針です。
日々蓄積されるナレッジを会社の資産として活用するためには、散在しやすい社内の情報を極力構造化し、AIがコンテクストとして活用できる状態にすることが最も重要です。
そのため Notion Architectureでは、組織ごとの柔軟性は確保しながらも、グループ全体では共通のデータベース構造・テンプレート・メタデータを用いて標準化を行いました。
これにより次の状態を実現します:
- 情報が散在せず、全社横断で検索・参照できる
- ドキュメント構造とメタデータをなるべく統一し、AIが学習しやすく
- メンバーが日々記録した情報が、自然とグループ全体の資産へと統合される
Notion上でのKnowledgeの置き場所
今後も引き続きアップデート予定ですが、まずver1.0として整理した構造を紹介します。
Mercari WorkspaceにおけるTeamspace設計
MercariのNotion Workspace配下には下記2種類のTeamspaceを設計しました。
- Group-wide Teamspace(全社員向け)→ グループ共通のナレッジ基盤を構成する領域
- Business / Domain Teamspace(事業・ドメインごと)→ 各チームが自律的に運用しながらナレッジを管理する領域

この2層構造を採用した背景には、
- 事業・ドメインごとの文化に合わせた柔軟性
- 全社では AI が学習しやすい統一された構造の維持
という両立を実現したい、という狙いがあります。
また、メルカリは約 2,100 名規模のグループ会社であり、Teamspace が増えすぎると管理コストが跳ね上がります。そのため、Teamspace の種類を最小限に絞ることも重要なポイントでした。
Teamspace間のKnowledge構造
各 Business / Domain Teamspace は、それぞれが独立運用できるよう設計しつつ、Group-wide Teamspace とリンクした状態で情報が流れる構造 になっています。
こうすることで「柔軟な運用 × 集約されたナレッジ基盤」の両立を実現しています。

では、それぞれのTeamspaceが具体的にどのような役割を担い、どう連携しているのかを説明していきます。
以下では、Mercari Group Teamspaceと事業・ドメイン別Teamspaceそれぞれの目的と役割を整理しています。この2つのTeamspaceは補完し合い、全社のナレッジ基盤を支えています。
Mercari Group Teamspace
目的
全社共通のナレッジ基盤として、Mercari Group Teamspaceは、グループ全体の中核となる複数の共通データベースを保持しハブとして機能することを目的としています。
役割
- 共通データベースを保持し、文書を一元管理する
- ドキュメントテンプレート、メタデータ設計、カテゴリ定義など「全社標準」を提供する
- 事業・ドメイン別Teamspaceからのページ作成・参照を受け入れるハブとして機能する
事業・ドメイン別 Teamspace
目的
事業やドメインごとの運用自由度を確保しつつ、Group-wide構造とリンクされた状態で情報を発信・管理することを目的としています。
役割
- Group-wide共通DBへの新規ページ作成を行う(=情報を正しい構造に流す)
- Group-wide DBのViewを表示・参照し、自部門に関連する情報を整理・活用する
- 必要に応じて事業独自のDBを保持し、ローカルでの文書管理を支援する
ナレッジはどのように管理されるのか
標準化されたドキュメント構造とデータベース管理
なぜデータベースとテンプレートによる標準化が必要なのか
おそらく多くの企業さんでも同様の課題を持っているかと思いますが、メルカリでは長年ナレッジが散在してしまう課題を抱えています。
例えば:
- プロジェクト資料の保存場所が統一されておらず、探すのに時間がかかる
- ドキュメントの構造や粒度が人によって異なり、AIが文脈を正しく理解できない
こうした状態では記録した情報が活用されず、「書いたけど探せない」「探せないから新しく作る」という負のサイクルに陥ります。
メルカリのアプローチ:共通データベース × テンプレートによる自然な標準化
これを解決するため、Notion 上に作成されるすべてのドキュメントは、用途別に整理された共通データベース上で管理されます。
各データベースには目的に応じたテンプレートを用意し、文書構造・メタデータ・プロパティの標準化をしています。
こうすることにより 「記録すれば自然と整理される」ナレッジ基盤 の実現を目指しています。
Group-wide Databaseの設計思想
では、具体的にどのようなデータベース群を設計したのか紹介します。
Group-wide Databaseは、Mercariグループ全体で共通化されたナレッジ基盤の中核を担うデータベース群です。
情報をタイプ別に整理し、横断検索・AI活用・全社統一運用を支える目的で設計されています。
設計思想
目的
ドキュメント構造を統一し、あらゆる情報を一貫したフォーマットで再利用・検索できる状態を作る
方針
- 各DBは「用途単位」で分割する
- テンプレートを通じて文書構造・メタデータを標準化
- 同じフォーマットで記録・共有できるようにする (AIが学習しやすくする)
テンプレート利用によるドキュメント標準化の推進
文書作成時は、各データベース(DB)に紐づいた新規ページ作成テンプレートを使用します。
※ ここでのテンプレートは、Notion公式マーケットプレースのものではなく、Mercari Workspace内で管理される共通テンプレートを指します。

テンプレートを利用することで、文書構成、メタデータ、プロパティを標準化し、全員が同じ形式と用語でナレッジを共有できるようにします。
下記のような効果やメリットを見込んでいます。
- コラボレーションの推進
- プロセス変更への柔軟対応
- AI が学習しやすい文書構造
Notion Architecture ver1.0のチュートリアル
ここまで、Notion Architecture ver1.0の構造とその設計背景などを紹介してきました。
メルカリがどのように Notion 上でナレッジを整理しているのか、Notionの画面を投影しながら説明します。これからNotionを導入する方は、参考程度に。既にNotionを導入している方からは、先駆者として「おいおいこういう事が起こるから気をつけると良いよ」といったアドバイスをいただけると嬉しいです!
おわりに
本記事では、メルカリが全社で取り組むナレッジマネジメントの基盤として構築しているNotion Architecture ver1.0の概要とチュートリアルを紹介しました。
Notion Architectureはまだ進化の途上であり、今後も組織の拡大や AI 活用の進展に合わせて継続的にアップデートしていきます!
最後になりますが、こうした全社規模のプロジェクトには、様々な方によるサポート、貢献が不可欠です。今回のNotion導入も組織、チーム、会社を跨いだ多くの関係者の皆さんの協力のおかげで実現できました。
特に、Notion導入を先にされていたSansanさんには、構造やテンプレート作成の際に大変お世話になりました。会社をまたいだ繋がりがあったのも本プロジェクトの醍醐味でした。

明日の記事はメルカリのCTO @kimurasさんによる最終記事です。引き続き最後までお楽しみください!




