こんにちは。メルペイQAチームの@uni0110です。
私は6月にスコットランドのエディンバラで開催されたEuroSTARカンファレンスに参加しました。EuroSTARは世界的に有名なQAカンファレンスの一つで、今年は4日間にわたり60以上のチュートリアル、セッション、キーノートが行われました。約350社から1000人以上が参加した大規模なカンファレンスです。
テーマはAI on Trial
今年のカンファレンスで最も注目されたテーマはAIでした。参加者との会話でも、「あなたの会社ではAIをどのように活用していますか?」という質問が最も多く、議論が盛り上がりました。
当時、メルペイQAチームは自動化にAIを活用して、それ以外の工程ではさまざまなツールを試している段階でした。そのため、私自身もAIに関するトピックに最も期待していました。
全セッションの半分以上がAI関連のトピックで、内容はそれぞれ異なりましたが、どのセッションも共通して強調していたのは「AIがもたらす効率性や利便性よりも、AIの誤用や不確実性に対する注意」でした。初日のチュートリアルでこれを実際に体験できたので、簡単に共有したいと思います。
Test by Human vs. by AI
初日のチュートリアルでは、人間とAIがそれぞれ同じ内容のテストを実施しました。その結果、人間によるテストではシステムに潜在するバグが発見されましたが、AIが作成・実行したテストケースではバグを見つけることができませんでした。
この違いは、人間だからできる批判的な思考です。人がテストケースを作成する際には、まず仕様を把握し、「どのような改修が行われたか」、「特定のケースではどうなるか」といった疑問があったらチューターに質問し、解決しました。このプロセスを通じて、不要なケースを削除し、必要なケースを追加することで、テストケースを完成させました。
しかし、AIの場合は、どのAIツールを使用しても入力された指示に従ってテストケースを作成するだけで、バグを発見するケースは作成できませんでした。
このことから、優れたQAエンジニアになるためには、クリティカルシンキングに基づいた積極的なコミュニケーション能力が必要であると痛感しました。
QAが見るAI
このチュートリアル以外にもAIが持っている以下の弱点のため、AIを使う時は十分気をつけないと行けないという内容のセッションが多かったです。
- プライバシー&セキュリティ
- バイアス
- ハルシネーション
- 不慣れな人による誤用
- 過度な自動化
ここまでの内容だと、カンファレンス全体がAIに対して批判的な見方をしているように思われるかもしれませんが、どのセッションもAIが作業に役立つツールであることを前提としていたため、Anti-AI的な雰囲気ではありませんでした。
ただ、警戒心を何度も与えた理由は、私達のロールがQAだからです。QAは他のエンジニアロールとは異なり、問題やリスクを発見する役割を担っています。そのため、AIに対しても厳しく警戒心を持たなければ、品質が損なわれる可能性があるからです。
終わりに
AIに関するベストプラクティスを期待して参加したカンファレンスでしたが、最後には自分は良いQAエンジニアなのか、もっとできることはないか、といった課題ばかり持ち帰ることになりました。また、QAエンジニアとしてAIに負けない私だけの価値について考え続けています。
しかし、さまざまな場所から参加した多様なQAエンジニアと話す中で、皆が同じ悩みを抱えていることが分かり、良い刺激を受けました。
特にAIについては、単なる便利なツールであり、silver bulletではないことを念頭に置いて活用していきたいと改めて感じました。