One Person, One Release – AI Nativeの夜明け

はじめに

こんにちは。メルペイVPoEの@jorakuです。
この記事は、Merpay & Mercoin Tech Openness Month 2025 8日目の記事です。
AI Agent / AI Code AssistなどのAI Toolsが日々リリースされており、めまぐるしい時代を楽しく過ごしています。ここで記載されているものも1ヶ月後には古くなる可能性もありますが、現時点での情報を残しておきます。

目次

  • AI 2027 シナリオ
  • AI Code Assist / AI Agentの登場
  • One Person, One Release
  • 役割の再定義
  • AI Nativeの夜明けに求められるもの

AI 2027 シナリオ

一時期話題になった非営利団体 AI Futures Projectが作成したレポートです。元Open AIの方などが著者です。
レポート内容は衝撃的でシンギュラリティについても触れられています。賛否両方のコメントもあり、正確性については敢えてここでは言及しません。というか私には分かりません。

AI Code Assist / AI Agentの登場

ただ、現実的に今、ソフトウェア開発に大きな変化が生まれています。

ソフトウェア開発の風景は、AIコードアシスタントやAIエージェントの登場により、根本的な変革の岐路に立っています。これらの技術は、単に「何を作れるか」だけでなく、「どのように作るか」を根本から変えつつあります 。マイクロソフト社のKevin Scott氏が「我々の生涯で起こった最も重要な技術プラットフォームのシフトかもしれない」と述べるように、この変化の大きさは計り知れません 。AIは単なる技術ではなくプラットフォーム、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)における協調的なパートナー、場合によっては自律的なエージェントへと進化しています 。
20年以上前の話になりますが、Public Cloudという概念を作ったAWSの登場も衝撃的でした。
AWS/Azure/Google Cloudの登場により、私たちはより安全に、より安定した、拡張性の高いプロダクトを顧客にいち早く提供できるようになりました。ただ、今回のAI Code Assist / AI Agentは、コード生成だけでなく、テスト、デプロイ、保守に至るまでソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)全体に影響を与えており、その進化のスピードは目を見張るものがあります。

One Person, One Release

これまでの技術的な専門性や、業界の知識などの専門性を活かしながら価値貢献してきている時代でした。ただ、これからはそれが両極端になっていくと考えます。より専門性の深い分野に特化していくのか、それとも、幅広い領域で素早く価値提供するのか。

これまでのAI Toolsの登場でプロンプトだけでアプリケーションが作れる時代になりました。プロンプトベースでアプリケーションを素早くプロトタイピングし、PoCレベルまで到達できる時代になっています。非エンジニア職種の方でも、一定のアウトプットが可能な環境が整ってきました。逆にエンジニアだとしても良い体験設計できるデザインをできるようになりました。
誰もがプロダクトを作れる時代に入り、“プロダクトをつくる会社”と“プロダクトを利用する会社”の境界が曖昧になりつつあります。もはや「プロダクトカンパニー」というのは古い時代の言葉になるのかもしれません。

そこで期待されるのは、起業したばかりのスタートアップの様に、一人の人がより多くの役割をスピード感もって価値提供していくことになると考えます。

次年度のEngineering Roadmapを思案している所ですが、Visionとして「One Person, One Release」を入れていきたいと考えています。
PMもEngineerも壁を越えていきます。一人の人が企画から開発、QA、リリースまで一気通貫で出来ることを目指します。

技術の壁を越え、ドメイン知識を越え、役割を越えて行くためのAIの活用とし、それらを使い熟すのです。

役割の再定義

それでは今後それぞれの役割はどのように変化するのでしょうか。より多くの方がこれまでの役割を越えていけると考えます。越えて行かねばならない。とも言えるかもしれません。
専門性がより深化していく流れは今の専門性と変わらない点があるかもしれませんが、より影響範囲を広げてお客さまへの価値提供が出来る役割です。仮にここではAI Agent Orchestration Engineerと名付けます。(参考記事
もちろん、AIを駆使することで各職種がコードに触れることも可能になりますが、求められる責任や精度はそれぞれの職能に応じて変わります。

役割 責任
AI Expert AIの専門家としてAI/LLM製品やツールの開発
System / Domain Architect AI/LLMでは補えない技術的難易度の高いものやPlatformなどの基盤を整備する役割。また、法令要件や求めるべき倫理など業界の専門性が高い要件を構築・監査する役割
Agent Developer 自社の業務や運用に合わせてデータの整備やMCPの構築、業務に合わせた自動化/省人化するAgentの開発。また、Agent to Agentのような基盤の開発も担う
AI Agent Orchestration Engineer AIエージェント同士を組み合わせ、お客さまの課題に対して機能や体験を統合的に設計・実装・提供する役割。One Person, One Release を実現する役割

AI Nativeの夜明けに求められるもの

新しい時代の夜明けです。地球が回る限り後戻りすることはありません。
最後に新しい時代に応じて何が求められてくるのか、あくまで個人的な意見ですが、夜が明けた今、個人・組織とって大切にしていきたいマインド・スキルセットを記載します。

組織

  • セキュリティと利便性の両立
    • AIは利便性高く、生産性にも大きく寄与しますが、自社の大事な情報の流出や新たなハッキングのリスク、また倫理的な観点のリスクも発生します。守るべき点ももちろん大事ですが、攻めと守り両方を求めていく姿勢が大事だと考えます。
  • 情報管理/情報戦略
    • これまでの情報資産や、情報化されていない経験知見をどのように蓄積していくのか、組織においてはこれまで以上に重要な要素になります。
  • AI活用の定量評価
    • 自社でどのようにAIが使われているのか、それを定量的に観測し、評価にも組み込んでいく事が必要になってきます。もちろんお客さまにどのような価値を提供できたのかとても大事な部分ですが、エンジニア含めたプロダクト開発する組織の一つの指標としては追うべき数値と捉えています。

個人

  • 言語化能力
    • AIに理解させるためには、正しく言葉で伝えていく必要がありますし、それらを学習してもらう必要があります。何がしたいのか、どうしたいのか、誰にでも分かるように論理的に記載して良く必要があります。
    • メルカリ入社後に驚いた事の一つとしてドキュメント文化があります。今後の時代にはこのドキュメントが功を奏するように持って行きたいと考えています。
  • 好奇心
    • 個人のマインドセットとしてとても大切だと考えるのが好奇心です。wakuwakuする心ですね。好奇心を持つのではなく、それを自ら作り出せる事がとても大事です。時代の変化は激しいですし、自分の領域を一部奪われてしまうのではないかという猜疑心も生まれます。止まっていては何も始まらないので進むしかありません。前に進むための動力としての好奇心を持つことが大切です。

もし、まだAIを活用しきれていないという課題感を感じている方、大丈夫です。今はAI Agent / AI Code Assistの勃興時代です。日々変わりますし、1ヶ月前の情報や経験がもはや古くなる時代です。
ですから、今までのアドバンデージは無く、今から始めても直ぐに先頭を走ることが出来ます。みなさま「好奇心」をもってこの変化を楽しんでいきましょう!

明日の記事は @toshickさんによる「GASで効率化!MVNOの動作検証仮事業者&Jira issue作成 with AI」です。引き続きお楽しみください。

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