英語が苦手なエンジニアがメルカリに入ってどうなったか

この記事は、Mercari Advent Calendar 2023 の7日目の記事です。

こんにちは!メルカリの Search Middleware チームで Software Engineer をしている @otter です。

ご存じの方も多いとは思いますが、メルカリのエンジニア組織ではグローバル化が進んでおり、チームにもよりますがコミュニケーションやドキュメントではほぼ英語が必須な環境になっています。
そのような環境のメルカリに英語がほとんど話せない私が入社してから4年が過ぎました。会社の環境も私自身も変わってきており、そこで得られたものや感じたものを紹介していきたいと思います。

どんな人にこの記事を読んでほしいか?

  • 英語を使った環境で仕事をしてみたい人
  • 仕事で英語を使っているがコミュニケーション方法の参考にしたい人
  • 組織のグローバル化を検討している人

入社前のモチベーション

前職では某IT企業でゲームプラットフォームの開発をしていました。コミュニケーションは全て日本語で、技術関連の英語のドキュメントを読むことはよくあるのですが、ドキュメント作成もほとんどが日本語でした。

ただ、エンジニアとして成長するには英語は必要だし、英語を使う環境で働きたいなと考え始め、元同僚からのお誘いもあり転職を決めました。

今考えると、全然話せもしないのに転職しようとした自分は少し無鉄砲だったと思いますが、当時はグローバル化推進への転換時期だったので日本語面接で採用されました。
また、転職を考え始めたタイミングでオンライン英会話を始め、有給消化期間中にニュージーランドのクライストチャーチで3週間だけ語学学校に通いました。

入社直後どうやって切り抜けたか

直前の語学学校やオンライン英会話はあまり役に立ちませんでした。
まず、入社当日のオリエンテーションや全体向けの会議にはありがたいことに GOT (Global Operations Team、メルカリの翻訳および通訳を行うチーム) の同時通訳が入っており、日本語で説明を聞くことができました。また、配属先のマネージャーとメンターが日本人だったので個別に相談するときは日本語を使っていました。

ただ、入社当日のウェルカムランチでは多様な出身のメンバー同士の会話が、それぞれの訛りもあり、早すぎてついていけず本当に面食らいました。当たり前ですがオンライン英会話の先生のように話す人なんて現場にはいません。近年はインド人の同僚と一緒に仕事することが多いので、Indian English には慣れていますが、最初の頃は全く聞き取ることができませんでした。

では、どうすればいいのか?一朝一夕でリスニング力をあげることはできません。私はツールに頼りました。Google Meet には英語字幕を付ける機能があるので、会議中は字幕をひたすら読みます。最近は自動翻訳機能も追加されましたが、そちらはまだ精度が高くないのでおすすめできません。

またオンライン会議ではなく対面のオフライン会議の場合でも、とりあえず自分のPCで Google Meet を開いておけばマイクが周りの会話を拾ってくれるので字幕を参考にしながら会議に参加することができます。目の前に人がいるのに画面ばかり見るのは難しいので、おすすめ度は低いですが参考までに。

メルカリの言語学習サポート

メルカリでは公用語を英語と決められている訳ではありません。そのため言語学習は強制されるものではなく業務上必要と判断されたメンバーが受けられるサポートという位置づけです。また、日本語を学びたいメンバーが受けられる日本語学習サポートも同様にあります。

「やさしい日本語」や「やさしい英語」といったカルチャーもメルカリならではで、全員の言語スキルを上げさせるのではなく言語ギャップをお互い埋めていこうという方針があります。

私が今まで英語学習に関して受けた恩恵は下記です。

  • オンライン英会話の費用全負担
  • MECT (Mercari English Communication Test)
    • コミュニケーションスキルレベルを知るための独自のスピーキングテスト
  • 独自の英語学習プログラム
    • 専任の先生とメルカリでの仕事に合わせた教材でレッスン
  • English Chat Lunch
    • ネイティブスピーカーのチームリーダー1名と学習者3名で毎週ランチ
  • エンジニアのための英語・日本語ボキャブラリーリスト
    • 社内ミーティングの会話から抽出されたエンジニアがよく使う語彙のリスト
    • 日本語学習者にも最適な学習ツール

各サポートは都度内容見直され更新されているので現在と異なるものもあり、私が受けたことがないものもあります。

(参考) 言語学習プログラム

コミュニケーション力をどうやってあげていくか

あえて英語力ではなくコミュニケーション力と書きました。私はUSで働いている訳でも外資系企業で働いている訳でもありません。本当にネイティブな英語話者は少なく、ほとんどのメンバーが英語を第二言語としている人たちばかりです。なのであまり難しい単語やフレーズを覚える必要はなく、実際に周りが使っている言葉を真似していく方が近道です。とくに仕事で使う内容は限られているので、各種学習サポートはあるのですが、実際に仕事で積極的に使って行く方がコミュニケーション力は上がると思います。

おすすめは少人数のミーティングに頻繁に参加することです。以前、インド人の新卒メンバーと毎日ミーティングの時間を作って、話しながら一緒に仕事をしていました。1対1だと「やさしい英語」で話してもらえるし、自分の発言するタイミングが増えるので、話す練習にもなります。

また大事なのは、説明が難しい内容のときは必ずドキュメントを作って挑むということです。
これは英語に限らずだと思いますが、たとえば、他チームに複雑なシステムの説明を1からするときは、予め詳細なドキュメントを準備してから説明します。そして上手く説明できなかったところは後から Slack で補足したり、こう話せばよかったという反省は次回への文章づくりに活かしたりします。

前述のようにコミュニケーションは口頭の会話だけではありません。Slack や PullRequest 上でも、周りから学ぶことが多々あります。入社してすぐ驚いたのは飛び交っている Acronyms (頭字語、イニシャルを並べた略語の一種) の多さです。初めて見るものばかりだったので、ググってはリスト化していました。その一部を紹介します。

【頻出 Acronyms in メルカリ】

  • OOO = out of office (Slack名やステータスで使う、例: @otter – Dec 7th OoO)
  • PTAL = please take a look (このPullRequestを見て!というときに)
  • BTW = by the way (話を切り替えたいときに)
  • IMHO = In my humble opinion (私の率直な意見では)
  • TIL = today I learned (それ初めて知った、というときに)
  • TBH = to be honest (正直なところ)
  • TBD = to be determined (仕様書や設計書の未定義の箇所に使う)
  • BRB = be right back (会議の途中で一時的に抜けるときに)
  • AFAIK = as far as I know (私の知る限りは)
  • IIUC = if I understand correctly (私の理解が正しければ)
  • IIRC = if I remember correctly (私の記憶が正しければ)
  • SSIA = subject says it all (タイトルだけで説明が不要な小さなPullRequestのDescriptionに使う)

これ以外にも略語ではないのですがよく使う言葉としては NIT/NITS (PullRequest上で些細な指摘をするときに使う) などがあり、思っていたよりたくさんの新しい用語を覚える必要がありました。

そして現在は

この4年間で直属のマネージャーは日本人→スペイン人→フランス人→スウェーデン人と変遷し、日本語が飛び交っていたチームも9人中6人がグローバルメンバーになりチーム会議も100%英語となりました。未だに私の英語はお世辞でも上手とは言えませんが、コミュニケーションの工夫と周りの温かいサポートのおかげで今ではそのグローバルなチームのTL(Tech Lead)もしています。

また英語を使う機会が増えるとともに人脈も仕事の種類も増えてきました。言語の壁があると他のチームとコラボレーションにも支障が出るし、新規プロジェクトからの声もかかりづらくなります。私の観測した限りでは両言語とも流暢に話せてコミュニケーション力が高いエンジニアは各所から引く手あまたです。私も現在全社規模のプロジェクトに参加しており、今まで自分の領域である検索機能まわりを中心に仕事をしていましたが、違う領域のチームに参加したり、別事業のヘルプに呼ばれることもあり、充実した働き方ができています。

メルカリ全体としても英語だけをサポートするわけではなく、言語のギャップをなくそうという取り組みがさらに進んでいる実感があります。以前は広範囲にアナウンスされる内容が日本語だけだったり、英語だけだったりということがよくありましたが、今では両言語でアナウンスされることが徹底されており、片方の言語だけだったとしても瞬時にbotが自動翻訳してくれる仕組みがあります。

さらに私事ですが、昨年はイタリア人のエンジニアと結婚し長男を出産しました。なので家でも基本は「やさしい英語」です。業務では絶対に使わないだろうという単語を頻繁に使うことになるので、それはそれで面白いです。息子もそろそろ言葉を覚えていく時期なので一緒に学んでいこうと思いますが、きっとあっという間に追い抜かされるでしょう。今から楽しみです。

最後になりますが、この4年の間に私が感じた、これから英語を扱う環境に飛び込んでいこうとする方たちの英語学習に関して重要だと思った点をあげておきます。

  • 入社前のオンライン英会話は業務の英語にはあまり役に立たない
  • 聞き取れないときはツールに頼ろう (Google Meet の英語字幕機能)
  • 難しい英単語やフレーズを覚える必要はない
  • 実際に周りが使っている言葉を真似していく方が近道
  • 言語のギャップをなくそうという取り組みが大事

それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!何かひとつでも参考になれば幸いです。

明日の記事は @wills さんです。引き続きお楽しみください!

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