Merpay & Mercoin Tech Fest 2023 は、事業との関わりから技術への興味を深め、Productやサービスを支えるエンジニアリングを知ることができるお祭りで、2023年8月22日(火)からの3日間、開催しました。セッションでは、事業を支える組織・技術・課題などへの試行錯誤やアプローチを紹介していきました。
この記事は、「Merpay Engineering Career Talk」の書き起こしです。
@keigow:今回のセッションは、「Merpay Engineering Career Talk」というタイトルでディスカッションを進めていきます。
@keigow:メルペイVP of Engineeringの@keigowと申します。私は、2016年にメルカリグループに入った後に、2018年のメルペイ立ち上げのタイミングから3年、メルペイに所属してました。2年ほどグループ会社のソウゾウという会社で新規事業の立ち上げに取り組んでいたんですけれども、この4月にメルペイに戻りました。
@osamingo:皆さんこんにちは、@osamingoです。@keigowさんと同じく、2016年8月にメルカリの子会社のソウゾウに入社しました。そのときのメンターは@keigowさんで、個人的には感慨深いです。
元々はバックエンドエンジニアとして入社し、プロジェクト開発に従事しました。2018年頃にメルペイへ異動し、バックエンドエンジニアをしていたのですが、約1年半後にエンジニアリングマネージャー(以下、EM)になりました。最初は、コード決済や加盟店管理/審査、加盟店精算周りに携わっていたのですが、現在は、Fintech ArchitectやEngineering Productivityという社内のデベロッパー向けのサービス開発のEMをやっています。本日はよろしくお願いします。
@fivestar:@fivestarです。本名はKatsuhiro Ogawaと申します。メルカリには2018年1月に入社し、6年目になります。最初はコーポレートエンジニアリングという、社内の評価システムや社内向けのプロダクトを開発する部門の立ち上げにジョインして、そこから1年半ぐらいメルカリ側で開発をしていまして、そのときはバックエンドアーキテクトということで、バックエンド寄りの部分も担当していました。
そこから2019年にメルペイに転籍し、ずっと与信部門に所属しています。そこでメルペイのあと払いやメルペイスマートマネーといった与信系サービスの開発を行っています。
エンジニアではありますが、組織上Engineering Headという役割を賜っていまして、チームのエンジニアリングに関する意思決定の取りまとめもしています。過去にはマネージャーや、スタートアップのCTOをしていた時期もあり、エンジニアとしてのキャリアをまた再構築している状況なので、少しでも参考になればいいなと思っております。
@keigow:では、早速ディスカッションの方に入っていきます。
@fivestar:@keigowさんがVPになったのはいつでしたっけ?
@keigow:正式には今年の7月ですが、メルペイに戻ってきたのが4月なので、そこから徐々に似たような役割をしていました。
@fivestar:僕がメルペイに入って1年経たないくらいから一時期、@keigowさんにマネジメントしてもらったことがありましたが、メルペイに戻ってきたと思ったらいきなりVPになったじゃないですか。きっかけが気になりますね。
@keigow:もともとソウゾウでHead of Engineeringという形でエンジニアリング組織を見ていました。ちょうど今年の4月のタイミングでメルカリShopsの事業がメルカリ本体と事業統合し、組織が変わるタイミングで、これからどうしようか迷っていました。
その中でメルペイに戻ってきてVPの役割を担当しないかという打診がありました。メルペイ自体はすごい大きな組織で難しさもよくわかっていたので悩みましたが、こういう機会はなかなかないと思っていて、チャレンジしないのはもったいないという気持ちが最終的には勝ちました。
@fivestar:元々VPはキャリアの選択肢として考えていましたか?
@keigow:元々ポジションにこだわりはありませんでした。自分のスキルが一番会社に貢献できる場所ってどこなんだろうと、ずっと考えていました。一番好きなのはプロダクト開発だったので、VPやCTOになりたいとは考えていませんでした。
でも、最初マネージャーをやったときは、マネージャーでいっぱいいっぱいでしたし、人が増えていく中で、中間管理の人が必要だと思ったタイミングで挑戦しようかなと思いました。
ただ、VPになりたいという気持ちもそこまでなくて、常に当時の上長には「たまに現場に戻りたいって思うんですよね」という話はずっとしていました。でも行動していく中で少しずつ考え方がアップデートされていきました。その結果としてVPにチャレンジをしたいと思うようになりました。。
@fivestar:どのタイミングで、マネジメントの方向に行こうと決心したのですか?
@keigow:これというタイミングはなかったです。最初はプレイングマネージャーだったので、コードも書きつつマネジメントしていました。また、プロダクトマネージャーの時期も挟んだことでコードから離れてしまい、それが続いて今に至ります。そのときの状況に応じて最適だと思う選択肢を選んできました。
次に、@osamingoさんからの質問です。
@osamingo:@fivestarさんは、Credit Designという与信やあと払いを管理しているチームに異動されてからも、こだわりをもって業務をされていると思います。組織が大きくなり、サービスがリリースされていくという変化が激しい中でも、永く所属されています。この中で、エンジニアリングの責任の深さや広さはどう変化し、またどう対応してきましたか。
@fivestar:もともと前のチームでバックエンドのアーキテクトという立場で、複数のサービスを組み合わせて全体のアーキテクチャを見ていましたし、自分の一番関心のある領域は、ドメインモデルやアーキテクチャでした。そのような設計を取りまとめるという役割を考えて、ずっとキャリアを歩んできています。
だから、僕が来たときと比べると、与信サービス事業はめちゃくちゃ拡大しているのですが、キャリア的な考えで言うと、もともとメルペイにきたときからある程度広く見ていけるようにという意識はもっています。その中で、僕は20代の頃はコードを書きたいと思っていたのですが、年齢を重ねるごとに、設計をきちんとして良いプロダクトを生み出し、課題解決をやっていきたいという思いがあります。
Credit Designの与信事業にすごく興味があったので、異動の希望を出して今に至ります。でも、最初はチームの中で信頼されることが大事だと思うので、最初は本当に小さいマイクロサービスの開発チームに入って積み上げていって、大きなマイクロサービスのテックリードをやったり、あとはメルペイ立ち上げからいろいろな課題があってその解決にオーナーシップをもって取り組むことを意識しています。
確かに広さ・深さは実質的に変化していますが、現場の第一線で、際限なくいろいろな課題を解決したいという思いがあったので、マネジメントではなく現場側の役割でやらせてもらっています。
@osamingo:特にメルペイだと、自分が作ったサービスに触れる喜びはかなり強いと思うんですよね。全体を設計することに対するメンタルやモチベーションについてはいかがですか?
@fivestar:チームのマネージャーとコミュニケーションをしていく中で、「もっとパフォーマンス発揮の仕方として、周りをうまく活用して」と言われたことで、少しずつ意識の変化が起こりました。
それから、今後LLMによってコードを書かなくていい世の中になるかもしれませんし、コードを書いていればお金がもらえる世界じゃなくなるかもしれません。それよりは、課題の本質に触れる方を自分の仕事にしていった方が、食いっぱぐれるリスクが少ないかなという打算的な部分もありました。
@osamingo:昔からそういう意識はあって、今このタイミングでもともと持っていたものが発揮されたイメージですかね。
@fivestar:与信事業はかなり課題が複雑で、お客さまの体験という点でいろいろな接点があります。
例えばあと払いサービスを使うところから返済して、そのお金を回収しなきゃいけなかったり、単体でひとつの事業としてPLを持つくらい複雑な事業です。法要件も複雑で、割賦販売法や貸金業法などの理解も含めて難しいドメインですが、難しい方が自分としてはチャレンジのしがいがあります。複雑なものを紐解いたときは嬉しいです。
メルペイの面白いところは、強い人が集まっていることです。特に与信チームは強いメンバーが多くて、会社からの期待値が常に高いんです。いろいろなサービスをどんどんアプリとして、事業を引っ張るプロダクト開発チームなので、会社からの期待値も含めてやればやるほど成果が出ます。そこで責任を持てて、しかも現場の中で必要に応じたマネジメントをしながら、組織を引っ張る立場にいられるのは、自分が昔から目指していた形の一つだったのでやりがいを感じます。
@osamingo:リスペクトできるメンバーと働けるのは、明文化できない福利厚生ですよね。
@fivestar:@osahimgoさんはこの会社に入ってからマネージャーになりましたよね。ICに戻りたいという葛藤はありましたか?
@osamingo:ありましたよ(笑)
「Go Bold」という会社のバリューがありますから、「自分がBoldに行けるところはどこなんだろう」ということを常に探っているタイミングで、ICに戻るという選択肢を考えたこともあります。でも今のところはマネージャー業が楽しいので続けています。
@fivestar:どういうところが楽しいでしょうか?
@osamingo:EMになったきっかけとして、メルカリグループに入社して2年半くらい経ったときに、自分のパフォーマンスを最大化させるときに「自分はこのままでいいんだろうか」とモヤモヤしていた時期が半年ほどありました。
当時、メルペイがリリース準備でいろいろ頑張っているタイミングでした。そのときに会社で開催されていた「Engineering Manager Philosophy Talk」のイベントに参加し、自分の気持ちが明確になりました。そのイベントは、外部の講師を招いてEngineering Managerの哲学や経験について語っていただくというものでした。そこで、タイミングよくEMに登用されました。
もともとコード決済や加盟店審査、加盟店管理などのプロダクトサイドを長く担当していて、例えば、NTTドコモさんとd払いで連携する場面や国の省庁と連携して何かをやる場面に立ち会うことが多々ありました。
それもすごく楽しかったのですが、EMの活動として、プラットフォームサイドにもチャレンジをしたいという気持ちがあって、今はArchitectやEngineering Productivityという裏方寄りのところを担当しています。
今の領域はプロダクトマネージャーの人がいなくて、エンジニアが自発的に動き、かつEMも動きもあるという、動き方やEMへの期待値が違うため、エリアによってかなり求められるマネジメントスキルが違います。そのギャップが楽しいです。
@keigow:今視聴者さんから質問が来ていますが、「キャリアを築いていく中で現場との距離から焦燥感が発生したときの向き合い方を知りたい」とのことです。
やっぱり、EMになって、自分がコードを書かないことで知識が遅れていくんじゃないかと思うこともあるのかと思いますが、どうでしたか。
@osamingo:そういう考えは、ありました。
一線で書いてないと、特にエンジニアの知識量、エッジなテックに対しての対応能力が著しく下がるし、コードを書くスピードは3分の1にまで落ちるという現象が早めに来てしまって。「俺はエンジニアとして死んでしまったんじゃないだろうか」という焦燥感に苛まれることは僕もありました。
そのとき何をやったかというと、1on1でメンバーから教えてもらうということです。マネージャーからメンバーに聞いた方が「こいつはまだテクノロジーに対してちゃんと関心を持ってるんだな」というアピールもできますし、現場から離れて焦燥感はあるのですが、チームで仕事しています。メンバーとのコミュニケーションという中で、僕はそこを埋めてきたところはあります。
@keigow:@fivestarさんにも聞きたいのですが、マネジメントではないですが、Engineering Headという立場で、コードを書く時間が減ってきているという話があったと思うのですが、似たような課題感や焦燥感はありましたか?
@fivestar:正直あるのですが、押さえておかなければいけない部分はある程度押さえていると思います。また、与信領域の全てを押さえておくというよりは、ある程度責任の移譲は必要だし、必要な意思決定を自分がしていく一方で頼ることも大切だと思います。
僕の場合、周りにいるのはテックリードなど、同じような役割の人たちなので、役割分担して自分が全部抱えないようにしています。
@keigow:最後、個人的に僕が聞きたかった質問なんですけれど、@fivestarさんは組織にもかなり興味を持っていると思います。実際、マネージャーという職種には興味を持っていますか?
@fivestar:1年前ぐらいまでは全然考えていなかったのですが、今のロールはいずれ他のチームメンバーにtake overしていかなきゃいけないと思います。そうなったときに、次に自分に求められるのがマネジメントの可能性もあると思っています。マネージャーは、選択肢として持ってもいいかなと思っています。自分がやりたいと思ったときは、改めて相談させてください(笑)
@keigow:まだまだ聞きたいこと・話したいことがたくさんあるかと思うのですが、時間が来てしまったので、本日はこれでおしまいにしたい思っております。
ご清聴ありがとうございました。