【書き起こし】Enabling ProgramのEngineering Headをちょっとやってみている – Masahiro Sano【Merpay & Mercoin Tech Fest 2023】

Merpay & Mercoin Tech Fest 2023 は、事業との関わりから技術への興味を深め、プロダクトやサービスを支えるEngineeringを知ることができるお祭りで、2023年8月22日(火)からの3日間、開催しました。セッションでは、事業を支える組織・技術・課題などへの試行錯誤やアプローチを紹介していきました。
この記事は、「Enabling ProgramのEngineering Headをちょっとやってみている」の書き起こしです。

@kazegusuri:それでは「Enabling ProgramのEngineering Headをちょっとやってみている」というタイトルで@kazegusuriが発表します。

まずは自己紹介です。@kazegusuriという名前で、社内でも社外でも活動しています。メルカリに入社したのは約8年前で、当時はSREとして入社しました。そこから1年ほど経って、旧ソウゾウと呼ばれている会社に移動して、ID & Payment Platformチームに所属しました。

これは、現在のメルペイの基礎になったIDと、決済の仕組みを作っていたチームです。さらにまた1年経って2018年にメルペイができると同時にチームごと異動して、それを機にアーキテクトとして仕事をすることになりました。

現在もアーキテクトの仕事自体は続けていますが、今年の4月からEnabling ProgramのEngineering Headを兼務することになりました。今回はEngineering Headの仕事について紹介します。

今日話すことは三つあります。まずはProgram体制の話と、所属しているEnabling Programの説明をした後に、Engineering Headについて説明をし、自分がEnabling ProgramのEngineering Headとして何をしているかを説明します。

Program体制とは、メルペイでの開発組織の体制のことです。2023年1月からスタートしました。

Program体制は、役割に応じて大きく三つのグループにわかれます。一つ目がJourney、二つ目がFoundation、もう一つがEnablingです。

Journeyはその中に三つのプログラムが存在していて、Foundationは二つのプログラムが存在します。自分が所属しているEnabling Programは一つです。

続いて、それぞれの役割について説明します。Journeyはお客さま体験を改善するいわゆるプロダクト開発を行い、お客さまの機能を提供する組織として活動しています。

Foundationの役割は、Journeyがプロダクト開発をするにあたって共通基盤を提供する組織です。Enabling Programは、Journey、Foundationの開発を支援する組織です。

Program体制はメルペイにおける組織であって、つまりメルカリ・メルコインにおいては開発体制が異なります。

グループ全体のプロジェクト開発に対して、インフラを提供しているのが、Microservices Platformです。

次に、Engineering Headの役割について説明します。各プログラムには、Engineering HeadとProduct Headがいます。

ただし、Enabling Programには現状Product Headがいないので、Engineering Headが、Product Headの役割も兼ねている状態です。彼らはいわゆる会社で言うとCTOとCPOのようなものです。技術的な意思決定をする人やプロダクトに対する意思決定をする人というイメージです。

Enabling Program・Product Headには、People Management的な役割がないので、組織には彼らとは別にManagerを置いています。

Enabling Programに所属しているチームは、この七つです。

Backend Architectは、バックエンドの開発を支援したり、アーキテクチャを考えたりするチーム。Client Architectには、モバイルやフロントエンドに携わる人が在籍し、各プログラムのクライアント開発を支援します。Engineering Productivityは、バックエンドの開発の生産性を上げるためのチームです。

SREは、会社全体の信頼性を向上させるために、いろいろな仕組みを考えています。Data PlatformとData Managementは、会社のマイクロサービスにおける各種データやプロダクトで得られたデータを収集して、それらをプロダクト開発に生かせるようにする目的で活動しています。QA Optimizationは、各チームのQAをより良い最適化を行うために活動しています。

Enabling Programを構成するチームは、多岐にわたります。では、Enabling ProgramのEngineering Headは、何を期待されているのでしょうか。

例えば、トップダウンで、Engineering Headとして今後の戦略を考えて、各チームにその戦略を遂行するように適用していく。もしくは、各チームがボトムアップでやりたいことを考えて、それに対して意思決定をすることが考えられます。

ただし、現状自分がまだEngineering Headになってから3ヶ月であることや、Enabling Programに所属しているチームの技術エリアがすごく広いので、戦略を立てたり、意思決定をすることは、正しい精度ですることが難しいと思います。

さらに、このProgram体制ができる前から、これらのチームは存在していました。当時から各チームは自分たちが何をすべきかを考え、自分たちの責任で遂行していくことがすでにできていた自立したチームでした。今回Program体制になったからといって、短期的にいきなりその方向性を変える必要はないと、個人的には思います。

では、自分がなぜ今回Engineering Headになりたいだろうと思ったのか、目的を説明します。

Engineering課題を解決するときのプロセスをこの会社として決めたいという理由がありました。メルペイでArchitectチームとして5年以上活動した中で、いろいろなEngineering課題があって、解決するためのいろいろなプロセスをとりました。

プロセスはタイミングや課題の内容に応じて変わります。

例えば今回の課題を解決するために、いろいろな開発チームに対策・対応をお願いしないといけないとき、どうやって対応を依頼をするのか。会社全体が大きくなった今、どうやって対応するのかを考えることは難しいです。

また、Engineering課題が決まったとしても、プロダクトとの優先度をどうやって決めるのか、そのプロセスが決まっていた方がやりやすいと感じていました。

これは、Enablingチーム全員の共通の課題です。そこで、この辺りをまずは解決したいなと思いました。

さらに、裏目標として「テックカンパニーを目指したい」ということがあります。

会社としては元々「グローバルテックカンパニーを目指しています」と公言していますが、個人的にもテックカンパニーをずっと目指しています。

Enabling Programで作っている技術はよくできていて、社内でもまだ知らない人にもっとアプローチしていきたいですし、社外にももっと自慢した方がいいと思います。

現在ある仕組み・技術をもっと発展させるために、技術に対する投資をする必要があります。そのようなサイクルを回すためにはまずは、Enablingチームに所属しているチームが、どれだけ会社にとって有用性があるのかを伝えていく必要があると思います。

個人ではなく、Enabling全体として伝えていきたいなと思って、Engineering Headをやりたいと思いました。

次に、実際にEngineering Headになってやっていることを三つ説明します。

一つ目は、課題の可視化。二つ目が、会社としての課題に設定する。三つ目が成果報告。それぞれ説明していきます。

まず一つ目の「課題の可視化」についてです。プロジェクトロードマップを作っています。この目的は、Enablingプログラムのやっていることや成果を他のチームの人たちが理解できる状態にするためです。

「プロジェクトロードマップ」という名前通り、プロジェクト単位でそのプロジェクトのロードマップを作成しています。JIRAを使って可視化していこうと思っているのですが、まだやりきれていないところです。

プロジェクトとは、中長期的な施策のことを言います。メルカリでは、全体的にOKRという考え方を、短期的な目標設定と成果を計測するために使っています。

今のOKRの使い方は、短期的な目標には使いやすい一方、中長期目標には使い勝手が悪い状態です。そのため、代わりにプロジェクトという考え方を用いています。

この考え方はメルカリ・メルペイ全体で使われており、同じプロジェクトという考え方をEnabling Programでも使っていこうと思います。

次に、プロジェクトの種類です。これは、Enabling Programの中でのプロジェクトの種類を指しており、通常プロジェクトと重要プロジェクトの大きく二つに分けて考えています。

通常プロジェクトの定義は、達成することで他のチームにインパクトがあること。これを達成すると、影響がある人たち、つまりプロダクトを開発している全ての人たちに対して、行っていることやその影響を知ってもらいたいという目的があります。

重要プロジェクトの定義は、達成することで会社レベルの目標にインパクトが出るものです。カンパニーのOKRや重要な目的に対して影響があるということです。周知したい人は、VPや他のProduct/Engineering Headです。

二つ目「会社としての課題に設定する」については、Merpay Engineering Projectsを実施しています。

これはメルペイでの重要なEngineering課題です。元々メルペイでは、この会社レベルで、重要な指標としてEngineering OKRがありました。しかし、やはりOKRであると短期的な目標になってしまいがちです。一方、重要なEngineering課題は中長期的なものが多く、会社としてもプロジェクトという形をとっています。

Merpay Engineering Projectsという会社レベルのプロジェクトは、Enablingの重要プロジェクトから取り入れてもらっています。Enablingの重要プロジェクトをEngineeringプロジェクトとして採用してもらうことによって、担当のVPがアサインされて、サポートが得られます。

大きな意思決定が必要な場合や、他のプログラムの優先順位の変更が必要な場合、VPレベルで説明してもらうことが可能です。

Engineering Projectsは、2週間に1回、各プロジェクトの進捗や課題を報告して、ブロッカーを洗い出しています。場合によっては、VPなどに対して対応を求めやすい状態です。

三つ目「成果報告」についてですが、成果発表会を行っています。これは、Enabling各チームの代表者が発表してもらっていて、3ヶ月に1回、成果を発表してもらっています。

今までは各チームでOKRを設定していていましたが、OKRの成果を他のチームに知らせる機会がほとんどありませんでした。

それを改善するために、成果発表会という形でEnablingチームがやっていることを発表したいと思いました。発表会には、エンジニアだけじゃなくてPMなど、開発に関わる広い範囲の人を招待しています。

実際に前クォーターの成果発表会を開いたときは、100名もの方に参加いただきました。Enabling Programが何をしているのか、みなさんが興味を持ってくださったおかげです。

これまで自分がEnablingのEngineering Headになって、プロセスを改善するためにいろいろなことをしてきました。でも、まだ改善することが多いです。

例えば、Engineering課題が会社レベルで設置されたとしても、プロダクトの優先順位をどうするのかという問題や、出した成果をもっと投資してでも伸ばしていくべきなのか、それともすでに成果が出ているからStayでいいのかという説明をしなければなりません。

今後としては、引き続きこれらの改善をしていくと同時に、すでに行ってきたことを継続していくことも重要だと考えています。
発表は以上です。ご清聴、ありがとうございました。

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