こんにちは。メルカリのEngineering Officeのafroscriptです。
メルカリでは2019年の9月から、およそ半年に1回、エンジニアのための技術のお祭り「Mercari Hack Fest (以下、Hack Fest)」という社内イベントを開催しています。
第7回目の開催となる次回の「Hack Fest」は、2023年4月19日から4月21日までの3日間での実施を予定しており、開催準備の真っ只中です。
イベント内容は回を重ねるごとに徐々にアップデートされているので、本記事では現段階での「Hack Fest」がどのようなイベントであるかを紹介します。
同様な社内イベントを開催されている方、企画を検討されている方の参考になれば幸いです。
Hack Festとは?
Hack Festとは、“Unlimited Hacktivity”をコンセプトとし、通常業務の延長では起こり得ない”innovation”を生み出すための技術のお祭りです。
通常業務を一定期間ストップし、ゆとりを持つことで、これまで考えもしなかったideaが生まれたり、自身のスキルの強化・拡張に専念することができます。
ちなみによりお祭り感を出すために、今回からロゴやキービジュアルを刷新しました。本記事のサムネ画像がそのキービジュアルです。(弊社クリエイティブチームがかわい&かっこよく仕上げてくれたので、ぜひ注目しください!)
なぜHack Festを開催するのか?
Hack Festが及ぼす影響は「①Productへの影響」「②組織内部への影響」「③組織外部への影響」という3つ軸で考えており、下記5つを期待する効果として位置づけています。
- ①【Productへの影響】プロダクトに革新を起こす新たなideaの創出
- 現在のロードマップには載っていない新たな可能性を見出すideaを考え、プロトタイプを作成します。
- ②-1【組織内部への影響】メルカリで働くことへのモチベーションアップ
- 様々なメンバーのいろんな視点からのidea/アウトプットを見てプロダクトのさらなる可能性を感じたり、普段の業務では関わりの少ないメンバーと一緒にプロジェクトに取り組む機会を得ることで、社内にいる多様で優秀なメンバーのことを知るきっかけとなり、メルカリで働くモチベーションに良い刺激を与えます。
- ②-2【組織内部への影響】スキルアップ機会の提供
- "What"から"How"まで一貫して担当することで、自身の視野を広げることができます。これはまた、エンジニアドリブンなカルチャーの醸成にも役立ちます。(通常業務では、基本的にPdM(プロダクトマネージャーが"What"に、エンジニアが"How"にResponsibilityを持っています)
- 普段の業務では扱わない技術を調査、学習し、アウトプットすることで、自身の専門性を強化・拡張することができます。これはまた、弊社エンジニア組織のVisionの1つである「全員Software Engineer」構想の促進にも繋がります。
- ②-3【組織内部への影響】エンジニアリングの可能性への期待感向上
- Hack Festはエンジニアやエンジニアリングのさらなるポテンシャルを会社全体に実感してもらう絶好の機会です。これによりテクノロジーに対する社内のプレゼンスをより向上させ、テックカンパニーとしての土壌づくりに貢献します。
- ③【組織外部への影響】テックカンパニーとしてのブランディングに寄与
- Hack Festの開催の様子や、メンバーからのアウトプットを外部発信することで、ブランディングに寄与します。
そして、これら5つの効果は長期的にプロダクトや会社の成長につながっていくと考えています。
Hack Fest開催の流れ
イベントの大まかな流れはチームビルディング -> ideaの探求 -> エントリー -> 開発 -> アウトプットとなっています。
チームビルディング
Hack Festには、チームでも個人でも参加できます。
チームで参加する場合のチームビルディング方法は、自分でつくるか、シャッフルチームに申し込むかの2パターンです。
自分でチームをつくる場合は、周囲のメンバー同士で直接声をかけあったり、Idea Board (Hack Fest参加者が自身が取り組むProjectの内容を書くシート) を見て、すでに形成されているチームの中でメンバー募集をしているところに参加したりすることができます。
また「シャッフルチーム」というチームビルディングシステムもあります。これは希望者を募り、集まった希望者の中からランダムに選ばれた3~5人のメンバーとチームを組みHack Festに参加する、という仕組みです。
Hack Festは普段は一緒に仕事をすることがないメンバーと開発をするチャンスでもあります。チームを越えた交流を生むことで、各チームが持つノウハウを相互に吸収 / 交換するきっかけになると考え、前回からこのシステムを導入しています。
ideaの探求、エントリー
Hack Festへのエントリー方法は、先に示したIdea Boardに記入することです。
何に取り組むかは各チームが自由に決めることができます。
Projectの例として、大きくわけて「Productに関わるもの」「システムや開発環境のリファクタリング・リアーキテクチャに関わるもの」「自身のスキルアップに関わるもの」の3つを提示しています。
- Productに関わるもの
- メルカリやメルペイの新しい機能や、メルカリに関連した新しいアプリ/サービスの開発(通常業務で開発する予定がないもの)
- システムや開発環境のリファクタリング・リアーキテクチャに関わるもの
- Internal toolやInternal dashboardの改善/新規開発
- MaintainabilityやDeveloper Experience、Productivityを上げるもの
- Security Issueへの対応
- システムの複雑性を下げるもの
- 不要なものの削除(code, feature, repository, service,…)
- リファクタリングを推進するツール作成
- 不要なものを削除するガイドラインの作成
- FinOpsに貢献するもの
- 自身のスキルアップに関わるもの
- 新しい/普段使わない技術の学習やその技術を使った開発
今回は「Productに関わるもの」へのヒントとして、カスタマーサクセスチームと協力し、社内のHack Festポータルサイトに"VOC (Voice of Customer) 特設ページ"を用意しました。
お客さまからいただくご要望の中で、特にHack Festのヒントになりそうなものを集めたページです。
普段の業務ではまだ拾いきれていなかったお客さまの要望を実現したり、まだよい解決策を見つけられていないお客さまの課題を解決するきっかけになったりするなど、Hack Festが社内の顧客志向性をさらに強化する機会になればと考えています。
開発&アウトプット
Hack Festは3日間のイベントですが、そのうちの最初の2.5日間はとにかく開発に集中する期間です。その期間内にアウトプットもまとめます。
アウトプットの形式は自由です。GitHubにコードをあげたり、スライドやドキュメントにまとめて必要なメンバー内でシェアしたり、Engineeing Blogで外部に発信したり、どの方法でもかまいません。なにかしらの方法で記録を残すようにお願いしています。
Showcase Day
アウトプットの一貫として、イベント最終日の午後に「Showcase Day」というイベントもあります。Hack Fest参加者の中から希望するチームが、自身の取り組んだ内容を全体にシェアする場です。
発表形式は2パターンあります。
-
Demo slot (最大約20チーム)
- 4分間で自身が作ったものをプレゼンします。
- その後2分間のQ&Aタイムがあります。
- 分かりやすいUIがあるもの、Demoがあるもの、しっかりと説明が必要なものに向いた発表形式です。
-
Pitch slot (最大約10チーム)
- 1分間で自身の成果を発表します。
- 取り組んだ内容の目的/概要/アピールポイントに絞ってショートプレゼンを行います。
- 加えてなんらかのアウトプット(コード, ドキュメント, etc)を提出し、その内容で審査されます。
- 例えば、「100行ひたすら不要なコードを消しました!」といったDemoを伴わない発表などに向いています。
Hack Fest Awards
Showcase Dayには表彰制度もあります。
発表されたProjectの中から、審査員が下記の審査基準に照らし合わせて審査を行い、Hack Fest Awards(Gold / Siver / Bronzeの3種類)が選出されます。
Extra Award
毎回ではないですが、Hack Fest Awardsとは別に、特別賞が用意されることがあります。
次回のHack Fest #7では"FinOps Award"と"LLM Award"の2つの特別賞も選出されることになっています。
"FinOps Awardと"は、コスト意識の文化の促進や支出に対するオーナーシップを持った個人 or チームを表彰する賞です。
また、LLM(=Large Language Model)技術を用いることを促し、グループ内において、より一層LLMの理解が促進されることを狙ったのが"LLM Award"です。
Hack FestのKPI
これまでイベントの効果測定として主に参加者へのSurveyを使ってきましたが、今回からKPIの見直しを行いました。Surveyは回によって回答率がかなり低くなってしまうことがあり、その場合効果の把握がなかなか難しいことがあるからです。
Survey以外に取れる数字を追加した現在のKPIを紹介します。現行のKPIは大きく2種類に分類されます。
イベント全体の盛り上がりを測定するKPI
イベントがそもそも盛り上がったのか、どれくらいの人にとってイベントが魅力的だったのかの目安になるKPIです。
- Hack Festへのエントリー者数
- Hack Festでは、先述したIdea boardに記入することをHack Festへのエントリーとみなしています。つまり、エントリー数とはIdea boardに記入した人の数です。
- エントリーは個人でもチームでも参加できるので、例えば3人チームでエントリーした場合は、3でカウントしています。
- Showcase Dayの参加者数
- Hack Festの最終日に開催される成果発表会”Showcase Day”への参加者数の合計です。
期待する効果に沿ったKPI
先述した「Hack Festに期待する効果」が得られているかどうかを把握するための指標です。
- ①【Productへの影響】プロダクトに革新を起こす新たなideaの創出
- Idea Board上のidea数
- [長期的に計測] Hack Festで生まれたideaが、実際のプロダクト / 業務に取り組まれた数
- ②-1【組織内部への影響】メルカリで働くことへのモチベーションアップ
- [Surveyによる測定] メルカリで働くモチベーションアップに繋がりましたか?
- ②-2【組織内部への影響】スキルアップ機会の提供
- [Surveyによる測定] 普段の業務では扱わない技術を学べましたか? or すでにある程度精通している技術を更に深めることができましたか?
- [Surveyによる測定] What(何をつくるか)からHow(どうつくるか)まで一貫して取り組める機会となりましたか?
- ②-3【組織内部への影響】エンジニアリングの可能性への期待感向上
- Engineers/PdMs以外のShowcase Day参加者数
- Engineers/PdMs以外のAfter Party(Awardの発表も行われる)への参加者数
- ③【組織外部への影響】テックカンパニーとしてのブランディングに寄与
- Hack Festに関連したブログのUU合計数
なお、KPIについてはまだまだ模索を続けているというのが正直なところです。今回新たに設定したKPIを測定し、それを元に改善を試みながらKPI自体も随時更新していこうと考えています。
まとめ
本記事では、2023年4月時点でのHack Festの開催概要についてまとめました。
せっかくなので、最後に今回のHack Festへの個人的な思いを書いてみます。
Hack Festは「技術のお祭り」であり、主な参加者はエンジニアとPdM (プロダクトマネージャー)です。しかし、技術が生み出す”ワクワク”は、エンジニアやPdMに限らず、社内全員で味わってほしいなと思ってます。
ゆえに昨今は「Hack Festは、社員全員が楽しみにしているお祭り!」という位置づけにより近づけていきたいと考えています。
社内のクリエイティブチームと協力してロゴやキービジュアルを刷新したり、「Hack Festに期待する効果」の中に「エンジニアリングの可能性への(社内からの)期待感向上」を入れたり、カスタマーサクセスチームと共同でVOC特設ページを作ったり、FinOps AwardやLLM Awardを用意したりしているのは、そういった背景があります。
さらに今回はメルカリだけでなく、メルペイのメンバーも参加することとなりました。
7回目の開催となるHack Festはいつにも増して、大盛りあがりになりそうです。
(ただイベントの開催規模が大きくなり、より多くの人が関わってくださると、ワクワクが大きくなる反面、イベントの複雑性も上がって、参加者にとってわかりづらいイベントになってしまったり…このあたりのバランス感覚は毎度毎度とても悩ましく思ってたりもします。。。笑)
ということで!
今回はどんなおもしろいアウトプットが出てくるのか!今からとても楽しみでなりません。
実際のHack Festが終わったあとに、開催レポートとしてまた記事を書こうと思っていますので、ぜひみなさまもお楽しみに!
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