【書き起こし】 Building an inclusive multicultural environment at merpay: Past, Present and Future – Tim、Robert【Merpay Tech Fest 2022】

Merpay Tech Fest 2022 は、事業との関わりから技術への興味を深め、プロダクトやサービスを支えるエンジニアリングを知ることができるお祭りで、2022年8月23日(火)からの3日間、開催しました。セッションでは、事業を支える組織・技術・課題などへの試行錯誤やアプローチを紹介していきました。

この記事は、「Building an inclusive multicultural environment at merpay: Past, Present and Future」の書き起こしです。

@tim:みなさんこんにちは。

@robert:こんにちは。

@robert:TimとRobertのセッションにご参加いただきありがとうございます。「Building an inclusive multicultural environment at merpay: Past, Present and Future」という題でお話しします。

@robert:まず自己紹介です。私はRobertです。メルペイではEngineering Manager(以下、EM)をしています。私は2018年にメルペイに入社しました。スロベニア出身で、日本に来る前は韓国、その前はスペイン、スロベニアでも働いていました。また、さまざまな業界でも仕事をしています。メルペイではバックエンドエンジニアとしてスタートし、その後EMとなりました。現在は、他のEMをマネジメントして、より良い組織作りに取り組んでいます。

@tim:Tim Tosiです。私はフランス、イギリス、そして日本で仕事をしてきました。フランスのパリ出身です。

私もいろんな業界を経験し、4、5年前からFinTechの専門です。メルペイには2020年の1月、コロナが広まる直前に入社しました。KYCチームのバックエンドエンジニアから始まり、2021年3月からはKYCチームのEMをしています。状況に応じて、Balanceチーム、CSToolチームなど複数チームのマネジメントもしてました。

@robert:それでは、パネルディスカッションを始めていきたいと思います。

@robert:まず、過去の日付を出して状況や取り組みをご紹介します。すでに1つは申し上げたのですが、他の二つの日付は何を意味するかわかりますか?

@robert:まず最初の2018年7月は、私がメルペイに入社した時期です。バックエンドエンジニアとして入社しました。

次の2019年2月は、メルペイがサービスを開始した時期です。メルペイほどの大きなサービスをローンチする際には、いろんなことを考えなければなりません。最初は、スタートアップのようなカオス的な状況でしたが、私はそこに魅力を感じ入社しました。

メルカリグループが大切にしているバリューというものがあります。「All for One」というのをここに入れておりますが、その言葉通りみんながメルペイのローンチというものに向かって仕事をしていました。今ほどたくさんメルペイにエンジニアがいなかったので、メルカリのエンジニアをはじめ多くの方がメルペイのローンチに向けて取り組んでいたのです。もちろんさまざまな困難がありましたが、みんな一丸となってメルペイの成功に向けて頑張りました。私もその一員となれて本当に嬉しく思いましたね。

ローンチ後、500万ユーザーに到達したのがその数ヶ月後の2019年10月です。ローンチ後も変わらず非常にカオスな状況が続いておりましたが、ここまでメルペイは成長しました。本当に素晴らしい仕事が一緒にできたと思います。

@robert:みなさんご存じのとおり、メルペイは日本の金融サービスです。それを提供するには非常にたくさんの作業が必要ですし、また金融という伝統的な業界では、法律や規制の問題に直面します。そして、この法律というのは日本語でしか書かれていないので、日本語を読めなければなりません。

私がメルペイに入社したとき、海外からの外国人の社員は私がメルペイの第1号社員でした。外国籍の社員は他にもいたのですが、その方たちは元々日本に住んでいた方です。私は韓国からメルペイに来たので、メルペイの人事部の方も初めは混乱したところがあったと思います。

メルカリグループでは現在、英語を話す社員を積極的に採用しております。しかし、それでも誤解やミスコミュニケーションは起こっています。どうしたらよりよく協働できるか、コミュニケーションの改善に日々努めています。

D&Iチーム、GOT(Global Operations Team)、LET(Language Education Team)といったさまざまなチームがあります。会社としてみんなが一緒に仕事ができるように英語を話すメンバーだけでなく、日本語を話すメンバーにも支援をしています。日本人が英語を学ぶだけでなく、外国人も日本語、そして日本の文化を学んでいくという、双方向の取り組みを行っていますね。

また、外国人と日本人の両者がいると、いろんなバイアスを持っていたりします。どんなバイアスがあるのか、そういったものを乗り越えていくことを学ぶアンコンシャス・バイアストレーニングは非常に良い取り組みでしたね。自分のバイアスを意識することが大きなステップです。

あとGOTも常に私たちを助けてくれます。GOTがいなければ私たちは生きていけません。例えば、1on1や会議のときにはサポートをしてくれます。通訳が必要だったらいつも提供してくれますし、翻訳が必要だった場合には翻訳もしてくれます。

FinTech、金融という分野は非常に規制が強い業界なので、日本語の文章がたくさんあります。元々私はBankチームに入っていて、銀行とのやりとりが必要でした。銀行の仕様・スペックも全部日本語だったので、GOTがその翻訳をしてくれました。

また、他にもサポートはあります。どうしたらよりよく連携できるか、チームビルディングのイベントも行いました。コロナ禍以前は、直接顔を合わせながらのChat Lunchを開催しました。このChat Lunchは自分の学びたい言語の練習を目的として参加できる場で、例えば、日本人が英語のChat Lunchに参加するという具合です。また、英語と日本語の両方のChat Lunchに参加することで知り合いを増やし、よりインクルージョンな環境をつくっていましたね。

その他にも様々な言語学習のサポートがあります。詳細はリンク先をご参照ください。
https://mercan.mercari.com/en/articles/2019-04-16-183000/
https://mercan.mercari.com/en/articles/2018-08-16-150000/
https://mercan.mercari.com/en/articles/2018-09-27-110000/

@robert:また、私は組織改善の取り組みや、他のエンジニアをサポートするということにも関わっておりますが、ここでもいろんな取り組みがあります。

エンジニアとして入社してから、プロダクトを提供する中でサービスの安定化を図り、しっかりと機能し、拡張性を担保することに取り組んでいました。しかしあるとき、「他にどんな課題があるのか?」「私が役に立つことは他にあるか?」ということを考えるようになりました。

メルペイには「Go Bold」というバリューをもとに、何かを変えたかったら、自分から変えていけるという風習があります。簡単ではないんですが、私は、本当にEMになりたかったんですね。EMになる前も、いろんなディスカッションやミーティングにも参加しました。自分が目指す成長のために、マネージャーになる前からそのような会に自主的に参加できました。

次に、メルカリとの連携についてです。メルペイとメルカリは同じアプリ内で使われているので、開発時も密に連携していますね。

最初のローンチ後、ホーム画面を最適化するプロジェクトがあり、メルペイのエンジニアとメルカリのエンジニアの間で、より強い連携が求められました。このプロジェクトが進行する中で、言語のコミュニケーションにおける摩擦も起こりました。そこで、どうやってより良く連携ができるかということを明確にするために、English Communication Guidelineが作られました。

メルカリグループはグローバルテックカンパニーになるということが目標です。みんなに強制して英語だけを使え、ということはさせたくありません。ただ、やはり期待値は明確にしなければなりません。うまくいきさえすればいいと、そこが明確でないときもあります。しかし、期待値・ガイドラインをきちんと設定することで連携が進むこともありますので、そのプロジェクトではEnglish Communication Guidelineの策定を行いました。

そのすぐ後に、TimもEMになりました。彼は、メルペイで日本語を話さない最初のEMです。今度はTimから自分の経験を話してもらいましょう。

@tim:私は日本語が上手ではないので、昔は大変でした。メルカリグループ内でもメルペイは同じグループ会社であり、サービスもひとつの同じアプリケーションで提供しています。でも、それぞれプロセスや管理、組織、文化も違うんですよね。

その一部として、使われている言語が違いました。初めの頃、日本語を使うメンバーたちに私のことを理解してもらうことがとても難しかったんです。そこでRobertと話したところ、私にもRobertの行っているプロジェクトに参加したらどうかと提案してくれました。

そのプロジェクトでTech Leadとして参加して、English-Inclusiveness Evaluation Systemというものを作りました。何かをまず変える前には、状況を理解する必要があります。技術的なことでも、変えるときはまず調査から始めますよね。フィーチャーを作ることのリスク、ビジネスを始めるときのリスクは何かといった状況を分析することから始めました。

この評価システムは、マトリクスのようなもので、エンジニアにとってのコミュニケーションにおけるさまざまな観点を挙げ、カテゴリによって定義されます。チームごとにこの評価のマトリクスを作りました。

このカテゴリの例としては、「Slackでは何の言語を使ってますか?」「ミーティングではどんな言語を使ってますか?」「GitHubでは何の言語を使ってますか?」それから「オンボーディングではどうですか?」「Playbookはどうですか?」というようなものです。

そして、各カテゴリのレベルが上がっていくと、よりバイリンガルな環境に近づきます。

@robert: システムをゲーミフィケーション化したわけですね。

@tim:そうです。しかし、全てを一度には変えたくなかったので、徐々に導入していきました。メンバーは各々の業務でみんな忙しいので、定義したレベルに達していない人がいても、プロセスはゆっくりと変えていきました。ただ、ゴールを明確に伝えるということは重要だと思いますね。

@robert:時間がかかりますよね。そして、外国人のメンバーも、日本人のメンバーも、国籍に関わらずお互いに理解するということが重要なので、強制はしたくないという思いがあります。

@robert:それから、このEnglish-Inclusiveness Evaluation Systemをどのように浸透させていったのですか?

@tim:バックエンドの組織でコミュニケーションする際、このEnglish-Inclusiveness Evaluation Systemを徐々に適用していったんです。最初に言ったように、日本語が得意でない私にとっては、相互理解がとにかく大変でしたが、努力して状況を理解する変化のときだと決めました。

では、どのようにいくつもあるチームを、現在のレベルから次のレベルに移行させていくのか。それを考えていきました。

当然ですが、「社内で日本語を使うことをやめよう」ということではありません。時々まだ聞かれることがありますが、とても重要なことなので理解していただけると嬉しいです。

日本に限った話ではありませんが、学生のときに英語を学校で勉強しますが、上達度は十分とは言えません。いくら英語を勉強していても、どこの国でも、または、どの大都市でも使えるほどの上達は難しいのです。
すぐに英語に切り替えるのはとても難しい。だからこそ、日本語の使用をやめることは考えていません。私自身、日本語を上達したかったから日本に来ました。なので、日本語を使うことをやめたくないのです。私は2019年にパリで働いていましたが、そこでも英語以外を使わないという傾向はなかったと思います。

@robert:韓国で働いていた企業では、みんなもっと英語を使おうとしていました。でも、韓国も日本と同じで、企業として英語の使用を促進するには、企業文化との関わりが重要だと思います。

@tim:次のスライドには、とても興味深い数字がありますね。基本的にこのプロジェクトは、Inclusiveness Initiativeというものでしたが、全てのチームでこの変化をロールアウトしていこうと目標を設定したものです。チームの状況をブロンズ、シルバー、ゴールドで表します。

これは全てのチームがゴールドレベルになろうということではありません。私が最初にKYCチームにジョインしたときは、英語を使うのがまだ大変でした。ただ、会社の中にたくさんのチームがあったので、まずはこれが我々のベースだ、というものを作りました。

入社したときは、最低限自分の作業ができればよかった。でも、改善策とかプロジェクトを提案するには、少しずつInclusivenessを進めていかなければいけません。

最初は最も英語を使っているチームから徐々に始めました。そして、少しずつ他のチームに広げていきました。クライアントのエンジニアにも協力いただいて、メルペイでは、このプロジェクトをエンジニアリングの部門に広く適用させようとしています。

そして現在では、14チームに広がっています。また、四半期末までに、16チームに導入される予定です。まだ完璧な状態ではないので、GOTが日常的にミーティングやプレゼンを助けてくれています。このパネルディスカッションも、もしかしたらGOTが通訳しているかもしれませんね。GOTによって日本語話者、そして英語話者が共存できるような環境ができていきます。この橋渡しのような役割をGOTは果たしてくれています。

@robert:メルカリグループはグローバルテックカンパニーを目指しているため、英語でコミュニケーションができることは望ましい状態ではあります。Know Your Customerの略であるKYCチームの一部は、メルカリ全体に関わっています。チームによっては、自分たちのドメインに集中し、他のチームとあまり関わりがないチームもあります。しかし、KYCチームのように他のチームと連携するなら、社内のコミュニケーションだけでなく、ドキュメントやデザイン設計のドキュメンテーションを書くことや、それを他のチームと共有してレビューをしてもらう場合において、英語が一番合理的です。

@robert:次にどんなステップが待っているのか、未来について話していきましょう。

@tim:このスライドは、Inclusive Teamの取り組みの、今後の展開・方針です。これまでの取り組みはエンジニアリング側に集中してきました。始めた取り組みを完了させるには、まず内部からスタートするのが一番やりやすいため、エンジニアリングの部門をどのように前に進めていくかから考えました。
次のステップとしてはプロダクト部門への取り組みです。プロダクト部門はエンジニア部門と非常に近いところにいます。プロダクト部門へのInclusivenessを進めていくにあたり、どんな課題に直面しているのか、直接わかる人が必要となります。そのため、複数人のPMとディスカッションを始めています。

@robert:うちの会社は、本当にボトムアップの取り組みが多いですよね。Go Boldというのは本当にボトムアップを促進するバリューだと思います。何か変化を起こすことを歓迎されます。

しかし、ある地点でVPsのサポートが必要になってくるはず。次のステップでは、トップダウンで押し付けずに参加を広げていく必要があります。例えばVPsから英語の使用を推進するとか、そういったことですね。

私の記憶に鮮明に残っているのですが、英語でAll Hands(全社ミーティング)をやっていましたね。CTOやCEOが英語を使うときもあります。でも、All Handsを全部英語にするというのはまた違うんです。英語と日本語をミックスすることで、ダイバーシティとインクルージョンを広げられるのだと思います。

言語のインクルーシブだけではなくて、D&Iを非常に歓迎いたします。それが私たちの文化の一環なのです。プロダクト側も参加していますし、いろんな計画が未来に向かっています。

@robert:すでにメルカリUSがありますが、もう1つ計画しているのが5月に発表したインドでのCOE(Center of Excellence)です。このインドのCOEは、よりグローバルなテクノロジーカンパニーになるための第1号の取り組みと言えます。

いろんな課題はありますが、自分たちの文化というものを持って、成功させていくためにはどのように展開していくか、チャレンジしていければと思っています。

これまで多くの日本市場向けの開発は、日本で行われていました。日本にいないと、プロダクトを実際に使ったり、独自の文化の中でプロダクトを体験したりすることが難しい。そのため、私もTimも他のエンジニアも、海外から日本に来て、プロダクトの開発をしていたのです。しかし、COEではどうしても日本の文化をはじめお客さまについて深く知ることができないので、プロダクト開発において新しいチャレンジですよね。どう解決できるかが非常に興味深いです。

@robert:グローバルなテックカンパニーに向けて、まだまだやることはたくさんあります。COEの取り組みをきっかけとして、メルカリグループ全体がインクルージョンされてその方向に進んでいることは確かです。これでパネルディスカッションを終わります。

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