この記事は、Merpay Tech Openness Month 2021 の2日目の記事です。
こんにちは。メルペイのEngineering OfficeとPM Office担当の多賀谷(@yoichitgy)です。
メルペイとメルカリのEngineering Office (@hisahiko) が共同でEngineering Manager (以下EM) の役割を定義しました。その定義は、基本的にメルカリグループ全社で定義したマネジメントの役割に従います。ここからエンジニアリングに特化した部分を新しく定義しました。この記事ではその詳細をご紹介します。
メルカリグループ全社のマネジメント定義
まず、メルカリグループ全社でマネジメント人材に期待されていることがあります。それは「圧倒的な成果をチームで実現し続ける」ことです。この期待に応えるためには、Go Bold、All for One、Be a Proの3つのバリューに沿った行動に加えて、マネジメント役割に必要な行動が求められます。メルカリグループでは、マネジメントに求められる役割を「戦略マネジメント」「業務マネジメント」「チームマネジメント」に分類して、以下のように定義しています。
1) 戦略マネジメント
- ビジョン/ロードマップ策定
- 組織構築/リソース管理
- 振り返り
2) 業務マネジメント
- 業務分担
- 意思決定
- 業務遂行
3) チームマネジメント
- メンバー評価/育成
- チーム状態の維持向上
それぞれの項目において、Manager / Manager of Managers / Vice President / Exec (グループ役員) の各レイヤーで求められる役割の期待値が定義されています。1つのチームを担当するManagerは、上位戦略を理解した上で担当領域の戦略・業務・チームをマネジメントしていきます。
Engineering Manager (EM) の役割と定義
EMはエンジニア組織およびエンジニアのマネジメントをする役割です。メルペイ・メルカリでは、Vision/Missionを達成するために、組織の仕組みづくりや組織課題の解決にコミットし、エンジニアがより活躍できる場をつくることをEMのMissionとしました。
EMの基本的な役割と責任を「エンジニアチームのマネジメント」と「エンジニアのマネジメント」を分解して定義しました。
1) エンジニアチームのマネジメント
- チームの強化計画の立案と推進
- チームが直面するチーム内外の課題の把握と解決
- エンジニアの採用に関する貢献
2) エンジニアのマネジメント
- エンジニアの目標設定と評価
- エンジニアの育成
- エンジニアのメンタリングおよびコーチング
- エンジニアの挑戦の支援
「チームの強化計画の立案と推進」は、全社マネジメント定義でも「戦略マネジメント」として期待されることです。メルカリグループ・各カンパニー・各部署のロードマップを理解し、自身のエンジニアリングチームを強化していくことが期待されます。これは「ありたい姿の明示・推進」を要素にもつGo BoldのバリューをEMとして出していくこととも言えます。
「チームが直面するチーム内外の課題の把握と解決」は、全社マネジメント定義では「業務マネジメント」となる部分です。自身のチーム内の課題はもちろん、関係するチーム外の課題の把握と解決のための働きかけが期待されます。成果に向けて粘り強く取り組む「オーナーシップ」を要素にもつBe a Proや、「優先度・方向性理解と推進」を要素にもつAll for OneのバリューをEMとして出していくこととも言えます。
残りの項目は、全社マネジメント定義では「チームマネジメント」に相当します。また、昨年のMerpay Tech Openness MonthでVP of Engineeringのhidekさんが紹介したエンジニア組織のピープルマネジメントに含まれ、「採用→育成→評価→リテンション→外へのアウトプット→より良い採用」というサイクルを好循環させることが期待されます。「チームワーク」を要素にもつAll for One、「専門性の発揮・向上」を要素にもつBe a Pro、そして「大胆なチャレンジ」を要素にもつGo Boldのバリューを発揮できる場をEMとしてつくっていくこととも言えます。
求められる能力
EMは、その役割を担うために必要となる能力を持っていることが期待されます。Software Engineerとしての経験を通じて得た技術的な知見を活用し、エンジニアチームとエンジニアのマネジメントを行うからです。メルペイ・メルカリでは、求められる能力を以下のように定義しています。
- メルカリグループ全社で定めるManagerとしての基本的な能力
- Software Engineerとしての活動を通じて得た技術的な知見
- 技術的な知見をベースとしてメンバーマネジメントをする能力
- 技術的な知見をベースとしてチームを正しい方向に向かわせる能力
- 技術的な知見をベースとして課題解決を推進する能力
Engineering Manager (EM) に期待される行動
EMへの期待役割を一言で表現すると「チームの活動を通じて顧客への提供価値を最大化するためのあらゆる活動を行う」となります。求められる能力を活かして技術的な知見をベースとして課題解決することは、EMの日々の主要な活動の一つとなります。
- 技術的な見地からの正確な課題の把握
- 技術的な見解を含む的確な状況の共有
- 技術的な背景を踏まえた上で最適な形での課題解決に向けた活動
Engineering Manager (EM) の多様性
上記のようにEMが行動をとっていくにあたり、EMのタイプや役割も多様であることが必要となります。それは、技術の進化や組織規模の拡大に伴い、各チームの技術領域・規模・直面する課題が異なるからです。
担当する技術
メルペイ・メルカリのプロダクト開発では、多様なバックグラウンドのエンジニアが協業することが必要な一方で、特定の技術領域に深い知見をもつことも必要です。そのため、EMにも幅広い技術を把握することによって貢献するタイプと、特定技術の専門性を強みとして貢献するタイプが存在するのは自然なことだと考えています。
マネジメントする人数
チーム人数は、基本的には6人程度が望ましいと考えています。一方で、少人数チームでEMの能力とチームの力が最大化するような柔軟なアサインも行われます。(例: 非常に高い専門性を持ったエンジニアチームのEM)
エンジニアリング実務
EMになるとチームやメンバーのマネジメントが実務の中心となるケースが多いと思われがちですが、メルペイ・メルカリではEMの活動を制限していません。チームの成果を最大化するための手段を制限をせず、最適なアサインをしていくべきだと考えています。(例: Tech Leadの役割を兼務するEM)
まとめ
以上、メルペイ・メルカリにおけるEMの役割を説明しました。
この役割定義は固定されるものでなく、これからも状況に応じて更新し続けていきます。一度Version 1として社内で公開したからこそ集まるフィードバックも受けています。改善案はBacklogとして管理され、将来の議論に備えています。
各社さまざまな事業領域・フェーズ・企業文化があり、EMが解決すべき課題もさまざまだと思います。同じバリューを共有しながらもグループ会社として異なるメルペイ・メルカリが共同でEMの役割を定義しました。この役割定義が他のEMみなさまの参考になれば幸いです。