皆さまこんにちは。
ソウゾウでメルカリShops を開発していますソフトウェアエンジニアの @sou です。
連載:「メルカリShops」プレオープンまでの開発の裏側 の7日目として、ソウゾウにジョインするまでの経緯と、どのようなモチベーションでメルカリShops の開発を行っているかをお話させて頂きます。
日本酒と私とメルカリShops
突然ですが、日本酒、お好きでしょうか。
私は地方と日本酒が好きで、それに関わる仕事がしたいと思っていたところ、メルカリShops 立ち上げの話が舞い込み、やりたすぎて社内公募に応募するだけでは手が止まらず、その日のうちにプレゼン資料を投げて社内転職を希望し、こうしてメルカリShops の開発に携わることになりました。
技術を扱うそれ自体ももちろんとても楽しいものですが、本稿では少し趣を変えてその磨いた技術を何に使うか、どのような世界を実現しようと思いプロダクトづくりに励むか、といったお話をお伝えできればと思います。
日本酒好きな方は是非、そうでない方もどうぞお付き合いいただければ嬉しく思います。
きっかけは、ある日本酒バーで美味しい燗酒を頂いていたときのことでした。
「残念だけど、それが最後かもね」
マスター曰く、そのお酒を造る蔵は廃業が決まっており、これが最後のロットになるかも知れない、と。
いちファンとして日本酒業界が落ち込んでいるとは聞いていましたが、目の前にあるお酒がもう飲めなくなると思うと、造り手が数を減らし、飲めるお酒が消えて多様性が失われていっているのだということを、実感をもって思い知らされたことを覚えています。
日本酒を造るのに必要な清酒醸造免許は平成元年には 2,438 件あったものが、平成29年には 1,594 件とその数を減らしています。
出荷量を示す課税移出数量も平成2年の 1,436 キロリットルから平成29年には 523 キロリットルまで落ち込んでいます。1
日本酒全体の消費量が落ち込み、生産者が消えていっていることがよく分かると思います。
衰退の原因を調べはじめてみると、ことは日本酒だけに留まらず地方の抱える人口減少や経済的衰退といった問題と密接に絡みついていることに気付かされます。
人口動態や慣習の変化でこれまで売れていたものが売れなくなる、
売れなくなることで廃業が相次ぎ、これまであったものが姿を消していく。
同様の問題は消滅可能性都市や商店街のシャッター街化、漁業農業といった一次産業の継続危機など様々な形で目にしており、日本酒だけでなく日本全国のスモールビジネス共通の悩みではないかと思います。
もちろん要因は様々ありますが、地域での消費が減って売れていたものが売れなくなったことはその大きな要因のひとつに思えます。
売れないのはマッチングの問題でもあります。
私が日本酒バーで飲んでいたように、生産量を減らしていた徳島の酒も東京の然るべき飲み手がいる場所に持ち込めば付加価値が付いて売れています。
こうして日本酒や地方の問題に興味を持っていた私にとって、メルカリShops の登場はその解決策としてぴたりとハマりました。
メルカリShops に感じた可能性
弊社 CEO の書いたソウゾウ新規事業「メルカリShops」を創った理由にあるように、メルカリShops は当初から「かんたんで、売れる」をコンセプトに掲げています。
売れることは力になります。
日本酒蔵の中には自助努力によって近代的なビジネス構造に転換を果たしたところもあり、売れることが生産者の喜びになり、新しい投資や商品開発を生み、経済的な成功が後継者育成につながる好循環を生み出しています。
ただ全ての蔵やスモールビジネスを営む方がこの成功に追随できるかといえば、難しいのが実情だと思います。
日本酒蔵がそうであるように家族経営や小規模に営まれている場合が多く、優れたプロダクトを作ることは得意であっても、売ることは不得手であるというケースは少なくありません。
優れた産品を作る能力と、マーケティングや販路開拓、EC のようなツールを使いこなす力は、また別のものです。
だからこそ、メルカリShops の掲げる「かんたんで、売れる」にはスモールビジネスを取り巻く状況を大きく変えてくれる可能性があると感じました。
特別な知識やスキルなく誰もが「かんたん」に出品することができ、
プラットフォームがマッチング機能を備えることで売り手の特別な能力に依存せず「売れる」。
これはメルカリが C to C で注力してきたことであり、B to C でその再現ができれば、可能性は現実になります。
メルカリだから出来ることであり、そのメルカリが会社を立ち上げてまでスモールビジネスの課題解決に注力してくれることを千載一遇のチャンスだと思い、嬉しく思いました。
かんたんに売れる世界が実現すれば地方の多様性は商品の特徴や豊かさになり、失われるものから地方の財産、資源へと転じます。
冒頭に話を戻せば、私が何の心配もなくこれからも日本酒を楽しむことができる、
寧ろ売れることで小さな蔵が活性化され、多様性をより豊かに増していく日本酒の世界を楽しむことができるようになる、
また同じことが地方の様々な文化や伝統、特徴ある産品で起こせるのではないかと思い、その可能性にアテられました。
ソウゾウの設立が発表された後に社内向けに説明会があり、同時に立ち上げメンバーを募る社内公募がオープンになり、私も公募に応じました。
それだけでは手が止まらず、その日のうちに簡単な提案資料を書き上げて Slack に投下し、メルカリShops への期待と立ち上げを手伝いたい旨を伝えました。
提案資料にどの程度の効果があったかは謎ですが熱量は伝わったのか、この3月よりソウゾウに転籍してメルカリShops の立ち上げを手伝えることになり、いまに至ります。
自分の力を何に注ぐか
It’s the closest thing we have to magic
それ(ソフトウェア)は私達に与えられたものの中で最も魔法に近いものである
これはマーク・アンドリーセンの言葉ですが、もし私達エンジニアが魔法使い並のパワーを持っているのなら、そのパワーをどこに投じるか、何に役立てたいかということを最近よく考えるようになりました。
同じ記事の中に次のような文章があります。
Someone writes code, and all of a sudden riders and drivers coordinate a completely new kind of real-world transportation system, and we call it Lyft.
Someone writes code, and all of a sudden homeowners and guests coordinate a completely new kind of real-world real estate system, and we call it AirBNB.(Interview: Marc Andreessen, VC and tech pioneer より)
誰かがコードを書く。すると突然、乗客と運転手がまったく新しいタイプの現実世界の交通システムをコーディネートする。私たちはそれを Lyft と呼んでいます。誰かがコードを書く。すると突然、家主と客がまったく新しいタイプの現実世界の不動産システムをコーディネートする。それを私たちは Airbnb と呼んでいます。(邦訳: スタタイ「マーク・アンドリーセン、未来を語る」より)
私自身、メルカリShops の開発にこれに似た楽しみを覚えています。
自分がコードを書くことで、大好きな日本酒や様々な地方産品の造り手とそれを求める買い手を結ぶ新たなシステムが組み上がっていく。
それを通じて造り手と買い手をエンパワーメントできる。
そんな世界の実現に力を尽くせるのはとても幸せなことです。
もしこの先、私の好きな蔵や応援する蔵がメルカリShops を役立ててくれ、それを目にすることができたなら素晴らしいだろうと思います。
メルカリShops を通じて「こうなってくれればよい」と思うことはたくさんあり、プロダクト開発を通じてその瞬間を自分の手でたぐり寄せることができるのはエンジニアとしても大きな喜びのひとつだと感じています。
マーク・アンドリーセンの言葉を信じるなら、ソフトウェアには大きな力があり、そのソフトウェアを構築できるエンジニアひとりひとりも力を持っています。
その力を何に投資するか、何に対してコードを書くかを吟味することで、エンジニアとしてより大きな楽しみや達成感が得られるかも知れません。
最後に
ここまでお読み頂き有難うございます。
いつもの Tech ブログとは少し違う趣になったと思いますが、技術を手段にどのような世界を達成したいかを考え、その手応えを味わうことができるのはエンジニアの醍醐味だと思います。
それを共有することで多少なりと日々コードを書く楽しみを深めて貰える足しになれば幸いだと思い書かせていただきました。
ところで日本酒とメルカリShops をネタに本稿を書いていますが、実は執筆段階でメルカリShops にお酒は出品できません。
まだ生まれたばかりのメルカリShops は足りない機能が多く、様々な方をお待たせしてしまいますが、開発陣全員で様々な機能に鋭意対応中で、お酒販売の解禁もその中のひとつになります。
ソウゾウでは、このメルカリShops を一緒に育ててくれる仲間を絶賛募集しています。
お酒販売の解禁ももちろん、足元は足りないものばかりでまだまだ作るべきものに溢れています。
登りがいのある大きな山があり、まだその挑戦は始まったばかりという状況にワクワクしませんか。
この立ち上げ直後のフェーズだからこそ味わえる達成感や経験があり、それを一緒に楽しんでくれる仲間を求めています。
興味ある方は是非キャリアサイトをチェックしてみてください。
もし本記事に興味を覚えて頂けた方がいれば、気軽にお話できれば嬉しく思います。
申し込みフォームよりぜひご連絡ください!
また 2021/08/18 から 09/28 の7週間をまたいでソウゾウ TECH TALK というイベントが開催されます。
テーマ別に技術的知見を共有し合うことを目的とした勉強会で、私もマイクロサービス開発をテーマにお話させて頂く予定です。
興味ある方はどうぞご参加ください。
連載もまだまだ続きます。
明日は「メルカリShops の CI/CD と Pull Request 環境」というタイトルで @dragon3 さんが登場予定です。どうぞお楽しみに!