Mercari Advent Calendar 2018 の15日目はEngineering Operations Teamの@jollyjoesterがお送りします。
本日はメルカリの技術的な成果のアウトプットの表現のひとつである技術カンファレンス、Mercari Tech Conf(以下MTC)を運営した際に筆者が考えたことを共有します。
筆者は昨年、今年とメルカリが主催するMTCのオーガナイザーを担当しました。
企業カンファレンスを主催するというレアな体験をこれからする方々にとって少しでも参考になれば幸いです。
目次
- MTCとは?
- なぜ開催したのか?
- どう設計したのか?
- 来年はどうするのか?
- まとめ
MTCとは?
Mercari Tech Conf(MTC)は、
株式会社メルカリをはじめとするメルカリグループ各社が、これから目指す方向や、これから取り組む技術的なチャレンジについてご紹介するエンジニア向けの技術カンファレンスです。
です。
2017/9/30に第1回であるMTC2017を、今年2018/10/4に第2回MTC2018を開催しました。
Tech Conf
とあるようにMTCは技術特化のカンファレンスです。
プロダクトやサービスの話ももちろん出てきますが、あくまで技術的な内容が主役です。
なぜ開催したのか?
祭りがしたかったから!・・・というのは冗談で、「メルカリの技術についてもっとちゃんと知ってもらいたい!」ということが。
メルカリは創業からこれまで様々な課題を技術で解決してきました。そしてそれらの成果は勉強会やこのMercari Engineering Blogなどで発信はしていたのですが、メルカリの技術の成果が増え、より複雑な課題に挑戦する中で、もっと効果的に伝えられる手段を必要としていました。
そのため、MTCという
- 半日〜1日という時間を同じ場で過ごしてもらえ、
- 一連のストーリーとして伝えたい内容を伝えることができ、
- さらに密にコミュニケーションして深いところまでディスカッションできる
形であるカンファレンスの場を作ることにしました。
MTCで期待したもの
メルカリの技術を「知ってもらう」ことに対する効用はフェーズによっていろいろあると思います。
少なくとも過去2回のMTCでは、主に「採用+社内相互理解推進」を「知ってもらう」ということの効用として期待していました。
具体的には
- 社外のエンジニアには、メルカリのエンジニアがやっていることを知ってもらい、興味を持ってもらって、一緒に働きたいと思ってもらいたい。
- 社内のエンジニアは、日々積み上げている成果が全体としてどんな価値があるかを再確認したり、異なるチームの成果を知ってよりシナジーが出しやすい環境を推進したい。
というようなことです。
これらの狙いについてはそれぞれ非常に効果があったのではないかと考えています。
ただ、2回開催して思うこととして、そもそもMTCを開催することの価値としては僕らが「メルカリグループ全体として技術的な成果や今後の実現していきたいことを(定期的に)整理して、発表して、記録に残す」機会そのものなのではないかと考え始めています。
次回はどんなことを主な成果としてMTCを設計すると僕らにとっても参加していただける方にも良い結果となるのか悩んでいるところです。
どう設計したのか?
さて、ここからMTCを実際に作る際に考えたことを記載していきます。
前提として現在のメルカリは
- 数多くのサービスを提供しているわけではない
- 開発者向けのサービスを提供しているわけではない
という状況です。
なので発信する内容はシンプルにメルカリというサービスに関わりが深いものというコンテキストが共有しやすく、かついわゆるDevRel的な要素は考慮する必要はありません。
テーマ
もっとも大事なものとしてテーマを決めるということをしています。
MTC運営ではこのテーマをあらゆる判断の基準にしています。
例えば
- 基調講演の内容に始まり、発信するコンテンツ全般のセレクト
- 社内公募コンテンツの採択基準
- ロゴを含むカンファレンス全体のデザイン
- その他企画のやるやらない、やるならどうやるなど・・・
メルカリグループの中では膨大な技術的な成果が生まれています。
これをテーマなしに漫然と発表するだけではただの大規模な勉強会になってしまいます。
テーマ決めはMTCに参加してくれた方にどんなものを持ち帰ってもらいたいか?を明確にする作業とも言えるかもしれません。
さらにテーマは社内メンバーが同じ方向を向くための羅針盤になってくれます。
技術カンファレンスをやる、となったら関係者は当日が近づくにつれて増えていき、きっと最終的にかなり多くなるでしょう。
関係者ごとに思い描くMTCが生まれてきますが、テーマが1つの基準となってMTCの方向性がブレにくくなります。
テーマは運営内部で最低固めておくとして、外部にも公開しても良いでしょう。
MTCでは最終的にテーマを外部にも公開しました。
例えば第1回のMTC2017ではテーマを「NEXT」として、メルカリが過去から現在にいたるまでに技術で実現してきたことを知ってもらった上で、「なるほど、メルカリは次こういうチャレンジしていくのか!」と将来のことを知ってもらう場に。MTC2018では「変化」というテーマにし、マイクロサービス化というキーワードの元、アーキテクチャ、組織両面から変わろうとしているメルカリJP、新CTOのもと新たな技術チャレンジをしているメルカリUS、そして去年はまだなかったメルペイの誕生など今まさに大きく変わろうとしているメルカリを伝える場としました。
コンテンツ
カンファレンスではどんな企画や配慮よりもコンテンツが最も重要だと考えています。
なのでコンテンツ自体はオーソドックスなスタイルで、ただし、中身を吟味します。
コンテンツの構成
MTCでは基調講演をベースに
- 運営セレクトのセッション
- 公募によるセッション
- 公募による展示ブース(デモを行ったり、ポスター発表ができるブース)
を設けました。
運営セレクトのセッションはテーマに沿った内容としてどんな内容がふさわしいかを有識者らと決めていきました。基調講演に次いでカンファレンスの背骨となるコンテンツです。
残りのコンテンツについては全社から下記の要件で公募をし、採択しました。
- メルカリならではの内容であること
- テーマに沿った内容であること
展示ブースは
- セッションという形ではアウトプットしにくい内容も表現したい
- セッションではなかなかできない双方向のコミュニケーションができる場を設けたい
という要望を解決できるので設けています。
タイムテーブル
コンテンツが決まったらタイムテーブル組んでいきます。
MTCに参加するエンジニアのバックグラウンドは様々なので、それぞれのジャンルのエンジニアが次に行く場所がない、、、ということがないようにパズルを組んでいきます。
あとセッションが続きすぎると疲れて後半何も脳みそに入って来なくなるので必ず30分程度の大きな休憩を複数回はさみ、その間展示ブースやコーヒー軽食等の休憩を楽しんでもらうという導線で設計するのが好きです。
その他
テーマとコンテンツで特に重要な要素のほぼ全部かと思います。もちろんこれ以外にも無数にやったこと、気をつけたことはあります。
例えば準備系でいえば
- 会場選定・装飾
- 導線設計・誘導
- ノベルティ制作
- 多言語対応
- ダイバーシティの配慮
企画系でいえば
- カンファレンスWeb, Appの開発
- 基調講演のVR企画
などなど。
これらの点で気になる点がある方はぜひ @jollyjoester までお声がけください!
ここからは細かい点ですが、カンファレンス運営に関連してよく質問される内容について筆者の見解を記載していこうと思います。
開催曜日について
MTC2017は土曜日開催でしたが、MTC2018は平日開催としました。
土日祝日に開催した方が、参加していただける方の数は増えるかもしれません。しかし、休日にMTCに時間を使っていただくことになります。
特にご家庭をお持ちの方の参加が難しくなるので社外の方にも社内の方にも平日の業務時間中に参加して欲しいという気持ちで平日開催としました。
MTCは良いインプットになるから当然業務として参加してOKと言ってもらえるようなカンファレンス作りをしていきますので、ぜひ業務で参加していただきたいと思っています。
開催時間について
MTC2017では午後半日の開催でした。これにはコンテンツ量として半日がちょうどいいというのもありましたが、ランチのことを考慮する必要がないということも午後から開催にした理由の1つでした。
個人的にランチタイムが鬼門(カンファレンスであまり良いランチ時間を体験した記憶がない)と思っており、運営も煩雑になるし、良い体験を提供できないので避けたいというのが本音です。
しかし、MTC2018ではコンテンツ量がどうしても収まりきらず、ランチ休憩を挟んで1日でした。
MTC2018ではメルカリメンバーと一緒にランチに行く企画を実施し、幸い参加者の方からは好評をいただきましたが、参加者全員がハッピーになれるランチ時間の過ごし方にはたどり着けていないので良いアイデアがある方はぜひ教えていただけると嬉しいです。
会場について
会場についてはあまり論理的なこだわりはないのですがなんとなく六本木を選んでいます。
メルカリといえば六本木のイメージだということと、ロジスティクスの面で近いところの方が運営が楽だし、社内メンバーがフラッと参加しやすいという点からオフィスに近い場所を選んでいます。
不思議なもので土地に根付く企業のイメージって意外とあるものだなと感じています。
チケットについて
MTCのチケットは有料(2〜3000円)に設定しました。
これは本当に興味がある方に来ていただくためのハードルとして設けています。
本当はメルカリを知っていただくために来ていただいているので無料でも良いのですが、無料だとメルカリや技術に全く興味のない方も参加される可能性が高くなります。
結果的にメルカリに興味があって参加していただく方の体験を悪くしてしまうのであえてハードルを設けています。
その分、ハードルを超えて来ていただいた方にはチケット代以上のお得感を感じていただけるように様々な企画を考えています。
来年はどうするのか?
ぜんぜんわかりません!
次回はこれまでの2回とは異なるまったく新しいMTCにできないかと目論んでいます。
お楽しみに!
まとめ
以上、MTC運営で考えたことをつらつらと書き出してみました。
書き出してみるとけっこう当たり前のことばかりなのですが、多くの関係者が関わるので1つ1つの決定がかなり大変だったり、ブレずに実行していくというのはとても強い意志が必要だったりでした。
おそらく、実際の運営においてオーガナイザーを担う方はもっともっと多くの悩みを抱えていると思います。
悩んでる方がいらっしゃいましたらぜひ @jollyjoester までお声がけください。一緒に悩みましょう!
余談(コミュニティカンファレンスと企業カンファレンス)
筆者はもともとtry! Swiftというコミュニティが開催するカンファレンスのオーガナイザーもしています。
それぞれオーガナイズする際の勘所として
- コミュニティのカンファレンスは失敗(赤字になる的な意味で)してはいけない。
- 企業カンファレンスは大成功しなければいけない。
ということを感じています。
コミュニティのカンファレンスとして期待されることはみなが技術でわちゃわちゃできる場そのものです。
多少不親切だったりしてもその場があればOK。無理して頑張って来年なくなってしまうことの方が困ります。
なので、一歩一歩固い部分を増やすやり方が向いていると思います。
一方、企業カンファレンスは企業の明確な意図と高いクオリティが期待されます。
この場合、できるものを積み上げていく方法では期待値を超えることは難しく、あるべき姿から逆算していくやり方が向いていると思います。
ということで、両方カンファレンスのオーガナイズということでやることは似ていますがだいぶ方法論変えないとなぁと思った次第でした。
以上、余談です。
明日 16 日目の執筆担当は @tenntenn です。引き続きお楽しみください 🙂